研究課題/領域番号 |
23570141
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
湯澤 聡 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40515029)
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キーワード | 分子認識 / シグナル伝達 / X線結晶構造解析 / 蛋白質間相互作用 / 細胞極性 / TPRモチーフ |
研究概要 |
LGNはパートナー分子との相互作用により細胞内局在と複合体の形成が制御されている.LGNはC末端領域の4つのGoLocoモチーフを介して3量体Gタンパク質のαサブユニット(Gα)と相互作用する.一方, LGNのN末端TPRドメインは,Inscuteable (mInsc)のN末端領域やNuMAのC末端領域と相互作用する.また,LGN自身のC末端領域も,LGN TPRドメインへ結合するパートナーとして知られている. LGNとパートナー分子複合体の詳細な分子機構を明らかにするために,当該年度はLGNの分子内相互作用について検討した.LGN TPRドメインとLGN C末端領域の相互作用に関与する最小領域を検討し,N末端側の8つのTPRモチーフと3,4番目のGoLocoモチーフ (LGN-LBD)を含む領域とが相互作用に重要であることを明らかにした.3,4番目のGoLocoモチーフはGαと相互作用するが,同じ領域を介してLGN TPRドメインとも相互作用することができることを示した.表面プラズモン共鳴法を用いてLGN TPRドメインとLGN-LBDの親和性を測定したところ, μMオーダーの解離定数を持つことが判明した.また,この領域はLGN TPRドメインに対しパートナー分子であるmIsncと競合関係にあり,LGN TPRドメインが形成するスーパーヘリクスの凹面を介して相互作用している可能性が示唆された.次に,LGNの分子内相互作用を検討するためLGN全長タンパク質の結晶化を行なった.完全長LGNタンパク質は,高濃度でアグリゲートする傾向があり結晶化は成功しなかった.そこで,N末端領域とC末端領域をトリミングしたところ,LGNタンパク質は良好な性質を示した.現在,結晶化を試みている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では,(1) LGNとパートナー分子mInsc複合体のX線結晶構造を決定し分子認識を明らかにする,(2) 自己阻害状態を反映したLGNのX線結晶構造を決定し自己阻害の作用機構を明らかにする,(3) LGNの自己阻害状態の解除におけるパートナー分子の役割を明らかにする,以上3項目について検討することを目指している.当該年度は,自己阻害状態を反映した全長LGNタンパク質について,タンパク質を調製し生化学的な解析を行うと共に結晶化を試みた.当該課題は,研究計画に従いおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い,引き続き当該課題を推進する予定である.具体的には,自己阻害状態のLGNのX線結晶構造解析,自己阻害状態を解除するLGNの変異体の作成と機能解析,そしてパートナー分子による自己阻害状態LGNの活性制御機構の解析を推進する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画した研究計画に従い研究費を使用する予定である.タンパク質生産,タンパク質の結晶化,生化学実験,タンパク質間相互作用解析を行うため,一般試薬,酵素,DNA合成,結晶化試薬,プラスチック器具の購入に研究費を充当する計画である.また,研究成果を発表し議論するための学会出席・発表に必要な旅費と論文発表に必要な研究成果投稿料に使用することを予定している.
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