研究課題/領域番号 |
23570142
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
沖野 望 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90363324)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | セラミダーゼ / セラミド / 緑膿菌 / 転写制御因子 |
研究概要 |
我々はこれまでに、スフィンゴ脂質分解酵素を生産する細菌を単離してきたが、その過程で、これら細菌には基質となるスフィンゴ脂質が引き金となる遺伝子発現機構があることを見いだしている。最近になって、我々は緑膿菌においてスフィンゴ脂質依存性の遺伝子発現に関与する新規転写制御因子(Sphingolipid response regulator, SplR)を同定することに成功した。本研究では、緑膿菌における新規スフィンゴ脂質依存性の遺伝子発現機構を分子レベルで明らかにすることを目的とした。 平成23年度はSplRの機能解析を行うために、SplRにシグナルを伝える因子の探索とSplRの高次構造解析を計画していた。前者のSplRにシグナルを伝える因子を探索するためにSplRにシグナルを伝える脂質のスクリーニングを行った。その結果、スフィンゴシンに加えて、セラミドがあたらにSplRにシグナルを伝える因子として同定された。一方、後者のSplRの高次構造解析に関してはこれまでに可溶性タンパク質として発現していたMBPとの複合体(MBP-SplR)を用いて結晶化のスクリーニングを行ったが、現在までに結晶は得られていない。そこで、この問題を解決するために、SplR単独もしくはSplRの推定脂質結合ドメインの大腸菌による発現解析を進めている。 また、上記の計画以外にも計画を前倒ししてSplRのDNA結合部位を探索する実験を進めた。その結果、セラミダーゼ遺伝子の転写開始点を決定すると共に、セラミダーゼ遺伝子の上流領域にSplRの結合部位を見いだし、その領域を65 bpまで絞り込むことが出来た。現在はこの領域の詳細な解析を進めると共に、この領域を使用してゲルシフトアッセイを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画は「SplRシグナルを伝える因子の探索」と「SplRの高次構造解析により、SplRの機能解析」を行うことであった。前者に関してはスフィンゴシンに加えて、セラミドがシグナルを伝える因子であることを明らかにした。また、高次構造解析に関してはMBP-SplRを用いて結晶化のスクリーニングを行ったが、現在までのところ、結晶の取得には至っていない。一方、計画を前倒ししてセラミダーゼ遺伝子のプロモーター領域の解析を行ったが、こちらに関しては転写開始点の決定、SplR結合部位の探索、SplRを用いたゲルシフトアッセイまで到達することが出来た。平成23年度の計画の中で高次構造解析に関しては結晶化に至っていないが、前倒しして進めた研究は順調に進行しているので、全体を通してみると計画は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は「SplRを介した遺伝子発現に関与するプロモーター領域の探索」を行うために、緑膿菌セラミダーゼ遺伝子の転写開始点の決定とSplRが結合するDNA領域の探索を計画していた。前者(緑膿菌セラミダーゼ遺伝子の転写開始点の決定)に関しては平成23年度に前倒しして実行したので、後者のSplRが結合するDNA領域の探索を中心に進めていくことを計画している。具体的にはSplRが結合するDNA領域をさらに絞り込んで、SplRが認識するDNA配列を決定する。また、平成23年度に計画していたSplRの高次構造解析に関しても、あたらな発現コンストラクトの作成や結晶化の条件を増やすなど精力的に進める。さらに、これらの実験と平行して、ここまでに得られた結果を中心とした内容で論文作成と論文投稿も行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画としては「SplRが結合するDNA領域の探索」と「SplRの高次構造解析」が大きなテーマとしてあげられるので、SplRが結合するDNA領域の探索に必要な試薬(ゲルシフトアッセイ、DNA合成、遺伝子関連試薬)やSplRの発現と結晶の作成に必要な試薬(大腸菌の培養、タンパク質の精製、結晶化試薬)を中心に購入することを計画している。また、これらの研究を円滑に実施するためには当初平成24年度分として計上していた研究費では不足する可能性があったので、平成23年度に使用予定であった研究費の一部を繰り越した。
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