研究課題
「記憶」や「学習」に重要な役割を果たすタンパク質複合体の形成機構を構造生物学の手法(X 線結晶構造解析、超遠心分析など)を用いて理解する。本研究の具体的な目的:シナプスに存在するNMDA 型受容体の機能をコントロールしているNR2B 分子と、これに結合する細胞内シグナル伝達タンパク質の相互作用、そして複合体の立体構造を調べる。NR2B の細胞質側領域は単独では天然変性状態だが、他のパートナータンパク質と結合することで特定の立体構造を形成する、という仮説を証明したい。 NR2B分子のC末端領域と、パートナータンパク質であるPSD95分子のPDZ1-PDZ2ドメイン領域の共発現系を構築し、NR2B-PSD95複合体の調製を試みたところ、安定な複合体を調製することに成功した。超遠心分析を用いてこの複合体の性状を調べたところ、単量体-二量体平衡にあることがわかった。結晶化ロボットを利用して、このタンパク質複合体の結晶化条件探索をスタートした。 PSD95分子と相互作用するSynGAP分子の複合体調製も試みた。PSD95分子のPDZ3ドメインとSynGAP分子のC末端領域を融合したタンパク質の発現調製を試みたところ、非常に安定なタンパク質を得ることに成功した。超遠心分析でこのタンパク質の性状を調べたところ、安定な二量体であることがわかった。結晶化を試みたところ、非常に良質な結晶を得ることができた。結晶構造解析のためのX線回析実験を検討している。
2: おおむね順調に進展している
PSD95分子とパートナータンパク質の複合体結晶構造解析が順調に進行しているため。
引き続き、NR2B分子とパートナータンパク質の複合体結晶構造解析に向けて、複合体の最適化を行う。結晶構造解析に使うことができる安定な複合体の探索を続ける。 また、PSD95分子とパートナータンパク質SynGAPの結晶構造解析が順調に進行しているため、結晶化条件の最適化とX線回析実験を行っていく。分子置換法を利用した結晶構造解析により、PSD95-SynGAP複合体の立体構造決定を目指す。
引き続き、タンパク質発現系の構築、タンパク質の発現・精製、タンパク質の結晶化を行うため、組み換えDNA実験に必要な試薬類、タンパク質精製のためのカラム・レジン類、タンパク質結晶化のための試薬類などの消耗品の購入が研究費使用の中心となる。また、学会発表のための旅費、大型放射光施設利用のための旅費、実験補助のための謝金、などこれらにも研究費を使用する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
FEBS J
巻: 278(11) ページ: 1944-54
10.1111/j.1742-4658.2011.08111.x
Nucleic Acids Res
巻: 39(4) ページ: 1538-53
gkq854 [pii] 10.1093/nar/gkq854
FEMS Microbiol Lett
巻: 318(1) ページ: 10-7
10.1111/j.1574-6968.2011.02233.x
J Biol Chem
巻: 286(50) ページ: 43569-76
M111.303339 [pii] 10.1074/jbc.M111.303339
巻: 286(36) ページ: 31864-74
M111.259630 [pii] 10.1074/jbc.M111.259630