研究課題
TAM受容体チロシンキナーゼTyro3について、標的分子であるGas6との結合解析を進めた。これまでの解析で見出した、Tyro3のホモダイマー化を解消する変異体Tyro3 NRと糖鎖修飾化された野生型Tyro3を解析の対象とした。なお、野生型Tyro3とTyro3 NRのGas6との結合の強さが同程度であることはSPRにより明らかにしている。大腸菌とK.lactisを用いてそれぞれ糖鎖修飾が無いTyro3 NRと、糖鎖修飾があるGlycoTyro3を調製し、Gas6についてはヒト細胞から調製した。まず、Tyro3 NRとGlycoTyro3のNMR解析を進め、主鎖[15N,1H]化学シフトの帰属がほぼ完了した。glycoTyro3については糖鎖切断を行い、糖鎖の有無でスペクトルを比較し、構造に大きな違いはないことを確認した。また、glycoTyro3とTyro3 NRのスペクトルの比較から、アミノ酸配列から予想された部位に糖鎖が付加されていることを確認出来た。さらに、Transferred Cross Saturation法を用いてTyro3 NR上のGas6結合部位を同定することにも成功し、その結果、Gas6結合部位と糖鎖修飾部位が互いに異なることが強く示唆された。この結果は、前年度に行ったSPRとゲルろ過による結合解析の結果を支持している。一方、もう一つのTAM受容体チロシンキナーゼMerについてはK. lactisによる大量調製方法の確立に成功したものの、選択的安定同位体標識化を試みたが、目的アミノ酸の標識効率が低いという問題に直面した。そこで、計画を変更してまずは標識効率を上げることが出来る系を開発した。
3: やや遅れている
Tyro3については、糖鎖修飾、構造及び機能に関する知見を積み重ねてきている。一方Merについては、これまでの試料調製やNMRに関する各種条件検討の結果、選択的安定同位体標識化が必要なことが示された。Merもまた糖鎖修飾の有無で構造と機能を調べる必要があるため、糖鎖の付加が可能なK.lactisによる調製を試みてきた。しかし、いくつかのメチル基を有するアミノ酸残基の選択的安定同位体標識化の効率が低いことが明らかとなった。今年度は共同研究者が中心となりK.lactisによる選択的安定同位体標識化及び重水素化の検討が行われ、方法が確立された。今後はこれを用いてMerの選択的安定同位体標識化を目指す。
平成25年度に確立したK. lactisによる目的アミノ酸を効率良く選択的に安定同位体標識化することが出来る系を用いて、Merの各種選択的安定同位体標識化及び大量調製を行なう。またそれを用いてNMR解析を行う。
平成25年度にMerのK. lactisによる選択的安定同位体標識化、大量調製、NMR解析を行い、その結果と結合実験のデータを基に結合様式を明らかにするとともに、国際学会で発表する予定であった。しかし、目的アミノ酸の標識化効率が低いことが明らかとなり、計画を変更して効率を上げるための系を開発し、その系を用いてMerの選択的標識化及び大量調製、NMR解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。このため、平成25年度に確立した目的アミノ酸を効率良く選択的に安定同位体標識化することが出来る系を用いて、Merの各種選択的安定同位体標識化及び大量調製、NMR解析を行い、国際学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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