研究概要 |
アクチノヒビン(AH)の標的はHIVの表面から突き出たタンパク質gp120の表面を覆う高マンノース糖(HMTG)である。このHMTGの3本に分岐した糖鎖の先端にあるα(1,2)マンノビオース(Man2)にAHが結合すると考えられている。本研究では、AHが実際にMan2に結合するかどうか、結合するならばどのような様式であるか、その結合の特異性はどこから生じるのか、なぜ種類の異なる他の棟鎖に結合しないのか、さらに3箇所の結合部位が等価であるかどうか、などを調べるために、まずAHとMan2の複合体(AH-Man2)の結晶化条件を最適化した。得られた結晶のX線回折実験を行い、構造解析することによって以下の成果を得ることに成功した。結晶の空間群はP213で、分解能1.6Aのデータを用いて、Rfactor=0.15まで構造を精密化することができた。AHの3個のモジュールにはそれぞれ糖結合ポケットがあり、アポ型のそれと大きな差異がない。3個のポケットそれぞれにはMan2が推定どおりに結合しているという構造的証拠を得た。各ポケットには、マンノース残基間で2個のCH…O水素結合によってコの字型のコンフォメーションをとって安定化したMan2が填り、糖の水酸基をAsp, Tyr, Asn残基が水素結合によって識別し、さらに疎水性相互作用でMan2のコの字型を認識している。このような構造的特徴はα(1,2)結合のMan2だけに特異に結合できる結合様式であることが判明した。以上の研究成果を2件に分けて、スペインのマドリドで開催された22回IUCrコングレスで発表した。これらをまとめた論文を雑誌PNASに投稿した。
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