研究課題/領域番号 |
23570150
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
村田 和義 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (20311201)
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研究分担者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / 興奮収縮連関 / クライオ電子顕微鏡 / 電子線トモグラフィー |
研究概要 |
骨格筋トライアドジャンクションは、骨格筋細胞の筋小胞体とT管膜との間に形成された構造体で、神経興奮を筋収縮運動に変換するための重要なタンパク質複合体である。このタンパク質複合体は、T管膜にあり神経興奮センサーとして働く電位依存性L型カルシウムチャネル(別名ジヒドロピリジン受容体(DHPR))と、筋小胞体膜にあり筋小胞体からのカルシウム放出を促すカルシウム放出チャネル(別名リアノジン受容体(RyR))からなり、骨格筋ではこれらが機械的に相互作用して興奮収縮連関を行っていると考えられている。本研究では、ウサギ骨格筋からトライアド膜をできるだけ保存のよい状態で抽出し、これを氷包埋したものを低温電子顕微鏡で観察する。そして、トライアド膜の傾斜像シリーズを撮影して、トライアドタンパク質複合体全体の三次元構造解析をめざす。 トライアド膜は、Mitchellらの方法(J. Cell Biol., 96, 1008 (1983))に従い、ウサギ(日本白色種)より骨格筋を摘出後、それを直ちにブレンダーミキサーで粉砕し、遠心分離を行い、ショ糖密度勾配遠心をして、その精製標品を得た。本品を4度に保ったまま生理研に輸送し、翌日直ちにカーボン膜穴グリッド上に氷包して低温電子顕微鏡で観察した。また、抽出したトライアド膜の一部は、同時にDHPRのリガンド結合活性を測定し、DHPRが失活していないことを確認した。クライオ電子顕微鏡観察の結果、直径数ミクロンのトライアド膜断片を確認することができた。しかし、像コントラストが十分でなく、膜状のタンパク質やその結合の様子は確認できなかった。今後は、ゼルニケ位相差法などを用いてコントラストを高めて観察することを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度においては、最初に調製したトライアド膜断片からクライオ電子顕微鏡を使って傾斜シリーズを収集し、三次元再構成まで行うことを予定していた。トライアド膜断片については、膜をブレンダーで粉砕する時間を検討することによって、非常に安定な状態で大きな膜断片を電顕のネガティブ染色によって観察することができた。また、リガンド結合実験によるDHPRの活性測定でも、失活がほとんどないことが確認できた。しかし、トライアド膜断片の氷包埋によるクライオ電顕観察においては、電顕像コントラストが低くトライアドが形成されていると思われる膜タンパク質複合体の場所を特定することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の問題点としては、トライアド膜断片においてタンパク質複合体の位置が特定できないことが挙げられる。そこで、今後は以下の2つのことを検討する。1)トライアド膜の粉砕時間の検討をさらに行い、もう少し膜断片を小さくする工夫をする。2)当研究所で開発しているゼルニケ位相差電子顕微鏡法を使って像のコントラストを高めて観察する。これら2点の検討により、興奮収縮連関をつかさどるタンパク質複合体の位置が特定できるものと期待する。そして、複合体の位置が確認できたらその部分の傾斜シリーズを撮影し、トライアドジャンクションタンパク質複合体の三次元構造再構成を行う。そして、得られた三次元像から個々の構成タンパク質を切り出し平均化することで分解能を向上させる。さらに、部位特異性抗体によりトライアド膜断片をラベルすることにより、より詳細な分子の位置を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度については、以下3点について研究費の使用を計画する。1)ウサギ骨格筋からのトライアド膜断片を調製する。トライアドジャンクションが観察しやすいサイズの膜断片の調製を検討する。2)ゼルニケ位相差電子顕微鏡を用いて、トライアド膜断片の無染色・氷包埋試料からトライアドジャンクションの位置を特定し、この傾斜シリーズを収集してトライアドジャンクションタンパク質複合体の三次元再構成を行う。そして、得られた三次元像から個々の構成タンパク質を切り出し、これを平均化する。3)部位特異性抗体によりトライアド膜断片をラベルすることにより、より詳細な分子の位置を決定する。
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