研究課題/領域番号 |
23570150
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
村田 和義 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (20311201)
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研究分担者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
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キーワード | 膜タンパク質 / 興奮収縮連関 / クライオ電子顕微鏡 / 電子線トモグラフィー |
研究概要 |
骨格筋における興奮収縮連関は、骨格筋の細胞膜が細胞内部に陥入したT管膜と細胞内部にあってこれと隣接する筋小胞体との間の物理的な相互作用によって引き起こされると考えられている。この部分はトライアドジャンクションとよばれ、T管膜上の電位依存性カルシウムチャネル(DHPR)と筋小胞体膜上のカルシウム放出チャネル(RyR1)を中心とする膜タンパク質巨大複合体によって形成されている。神経を介した骨格筋細胞膜の興奮はDHPRの構造変化を引き起こし、この機械的変化がRyR1を活性化して筋小胞体からのカルシウムの放出を引き起こす。しかし、このトライアドジャンクションの正確な構造はわかっておらず、未だ想像の閾を出ない。本研究では、興奮収縮連関の構造的基盤を確立するため、トライアドジャンクション全体のクライオ電子顕微鏡(電顕)トモグラフィーによる構造解析をめざす。我々はこれまでに、トライアドジャンクションをウサギ骨格筋より活性を保ったままで取り出すことに成功しており、これを直ちに氷包埋してクライオ電顕によって観察した。その結果、スパイク状の膜タンパク質を含む膜断片を多数観察することができた。この膜断片はその形状と膜タンパク質の大きさから、筋小胞体であると考えられた。ただし、この中からトライアドジャンクションの場所を特定するのは困難であった。そこで、当初の計画に加えて光顕・電鍵相関観察を導入し、蛍光抗体ラベルを使ってトライアドジャンクションの場所を特定することを考えた。DHPRの細胞外部にあるβサブユニットの抗体をトライアド膜断片に反応させてこれを蛍光ラベルし、急速凍結して電顕用の凍結グリッドを作製した。そして、これを低温ステージのついた蛍光顕微鏡で観察した。その結果、トライアドジャンクションを思われる膜断片を多数確認することが出来た。今後はこの部分を集中的に電子顕微鏡下で調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
活性を保ったままのトライアド膜断片をクライオ電子顕微鏡で観察するところまでは順調に進んだ。ところが、膜断片の多くが筋小胞体であることがわかり、電子顕微鏡下でこの中からトライアドジャンクションの場所を特定することが困難であることがわかった。そこで、当初の計画を変更し、抽出したトライアド膜断片をDHPRの細胞外部位であるβサブユニットの抗体を使って蛍光ラベルし、多くの膜断片の中からトライアドジャンクションの場所を容易に特定できるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
抽出されたトライアド膜断片をDHPRのβの抗体を使って蛍光ラベルした結果、トライアドと思われる領域を蛍光顕微鏡下で多数観察することができた。今後は、これをさらに金コロイドなどで標識して電子顕微鏡下でも容易にその位置を特定できるようにし、その場所からトライアドジャンクションの連続傾斜像を撮影して、トモグラフィーにより立体再構成を行う予定である。そして、これに既存のDHPRとRyR1の構造をあてはめることにより、興奮収縮連関の構造的基盤を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料はすべて調製済みである。今後は、この試料をラベルするための金コロイドを購入、蛍光顕微鏡および電子顕微鏡観察のための消耗品の購入、コンピュータ解析のための消耗品の購入、結果発表のための資料作成費・旅費等に使用する予定である。
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