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2012 年度 実施状況報告書

X線結晶構造解析による血栓症発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23570155
研究機関独立行政法人国立循環器病研究センター

研究代表者

秋山 正志  独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30298179)

研究分担者 小亀 浩市  独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40270730)
武田 壮一  独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80332279)
キーワードADAMTS13 / VWF / ずり応力
研究概要

交付申請書の計画にしたがい、血栓症の発症メカニズムの分子基盤を明らかにすることを目的に、ADAMTS13と中和抗体、ならびにプロテインSとC4BPBとの複合体の結晶構造の定をめざして、結晶化スクリーニングならびに新しい哺乳動物細胞の一過性タンパク質大量分泌発現系の構築を行った。結晶化スクリーニングの結果、ADAMTS13と中和抗体複合体の結晶が二種得られたが、十分な分解能を持ったものを得ることができなかった。構築済みベクターではADAMTS13およびプロテインSの発現効率が悪かったことを受け、あらたに動物細胞系での一過性発現系の構築を行った。具体的には基質であるVWFの認識および切断に必要とされるADAMTS13のN末側のMドメインからSドメインまでの領域(ADAMTS13-MDTCS)、プロテインSのC末側SHBGドメインをコードする領域をニワトリのアクチンプロモーターを使用したほ乳類の一過性分泌発現ベクターに組み込んだ。さらに、ADAMTS13の最小基質を含む93残基のVWF領域(VWF-93)、プロテインSのSHBGドメインと相互作用することが明らかにされているTYRO3のイムノグロブリン様ドメインを上記と同じ発現ベクターに組み込んだ。コトランスフェクションによるMDTCSとVWF93、SHBGとTYRO3の共発現によってADAMTS13やプロテインSの発現量が単独発現にくらべて大きく増加することが分かった。その結果、これまでよりも多くの精製タンパク質を得ることが可能となり、結晶化スクリーニングが容易となった。また、N末端にFLAGタグを付けて、抗FLAG抗体ゲルを用いて精製を行った結果、純度が大きく向上した。この系を用いて、プロテインSとTYRO3の複合体結晶を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

DTCSと中和抗体の複合体の結晶を得ることはできたものの、高分解能を達成できないことから、MDTCSとVWF93の複合体の結晶のスクリーニングに切り替えた。「研究実績の概要」で述べた発現ベクターを用いて、結晶化スクリーニングに必要な量のタンパク質を動物細胞において発現・精製することが可能となり、現在結晶化のスクリーニングを進めている。この発現ベクターはこれまでの安定細胞株の分離を必要とすること無く、一過性のトランスフェクションで高効率の発現を行えることから、簡便に複合体の発現を同一の細胞で行うことが可能である。さらにトランスフェクション試薬にポリエチレンイミンを用いることで、極めて安価で高効率のトランスフェクションを行うことができるようになった。これまでのところ、プロテインSの4番目のEGFドメインとSHBGドメインもしくはSHBGドメインとTYRO3のイムノグロブリン様ドメインの共発現では、複合体結晶が再現性良く得られるものの、分解能が高い結晶を得るまでには至っていない。
これらの作業と並行に、P475S変異体ADAMTS13-DTCSの結晶構造を決定し、野生型と比較を行い、生化学的実験と合わせて、局所的な構造の差が、基質親和性に影響を及ぼし、活性の低下をもたらすことを明らかにし、その成果を論文として発表した。さらに、発現させた組み換えADAMTS13タンパク質を用いて、マウス心筋梗塞モデルで細胞への保護効果が得られることが共同研究で明らかになった。

今後の研究の推進方策

ADAMTS13のDTCSドメインおよびTTP患者からクローニングされたADAMTS13中和抗体の複合体の結晶は、二種類の中和抗体において一辺200ミクロン以上の結晶が多数得られたものの、X線回折実験の結果、十分な分解能を得ることはできないことが分かった。そこで方針を転換し、ADAMTS13のMDTCSドメインとその領域と相互作用するVWF A2ドメイン内の93残基からなる領域(VWF-93)との共発現系を構築した。現在この系を用いて大量発現を行い、結晶化スクリーニングを行っている。また、プロテインSとC4BPBとの共発現は発現量の増加を認めず、結晶化スクリーニングに用いる十分な量を得ることができなかった。そこでC4BPB同様に、プロテインSのSHBGドメインに結合して、プロテインSの細胞保護効果に重要な機能を果たしているTYRO3のイムノグロブリン様ドメインを共発現させたところ、発現レベルが大きく増加し、複合体の結晶化スクリーニングが可能となった。結晶自体は効率よく得られているが、分解能が低いため、今後エンドグリコシダーゼを用いた糖鎖除去を行って、スクリーニングする予定である。また、現在2つの連続したイムノグロブリンドメイン様ドメインを発現させているが、1つのイムノグロブリン様ドメインだけを発現させる・EGF様ドメインありなしのSHBGドメインドメインを発現させる・糖鎖部位変異を入れるなど結晶の安定性を増加させることで分解能の高い結晶を得ようと考えている。結晶の凍結保護材に関してもスクリーニングして、回折実験に最適な条件を探す予定である。

次年度の研究費の使用計画

動物細胞の培地、抗生物質、結晶化のプレート・試薬を研究室のストックを出来うる限り使用して物品費を抑制し、出張を控えて旅費を減らした結果、残額(524,140円)が生じた。25年度は海外出張を予定しており旅費の割合が高かったが、次年度使用額が増えたことで、前年度に引き続き動物細胞の大量培養に必要な培地や結晶化スクリーニングのための物品購入費用をねん出できた。次年度は「今後の研究の推進方策」にのっとり、25年度請求分と合わせて、動物細胞の大量培養系を用いてタンパク質を精製し、結晶化のスクリーニングを行う予定であり、物品費で培地・血清・精製用担体ならびに結晶化スクリーニング用の試薬やプレートを購入する。また、成果が得られた場合には請求した旅費を用いて、国内外の学会で発表する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] プラスミノーゲンの立体構造2012

    • 著者名/発表者名
      秋山正志、平井秀憲、宮田敏行
    • 雑誌名

      日本血栓止血学会誌

      巻: 23 ページ: 516-519

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ADAMTS13研究の最先端2012

    • 著者名/発表者名
      宮田敏行、小亀浩市、秋山正志、坂野史明、中山大輔、武田壮一
    • 雑誌名

      臨床血液

      巻: 53 ページ: 672-679

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ADAMTS13 safeguards the myocardium in a mouse model of acute myocardial infarction.2012

    • 著者名/発表者名
      Doi M, Matsui H, Takeda H, Saito Y, Takeda M, Matsunari Y, Nishio K, Shima M, Banno F, Akiyama M, Kokame K, Miyata T, Sugimoto M
    • 雑誌名

      Thromb Haemost

      巻: 108 ページ: 1236-1238

    • DOI

      10.1160/TH12-09-0674

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Binding of von Willebrand factor cleaving protease ADAMTS13 to Lys-plasmin(ogen).2012

    • 著者名/発表者名
      Shin Y, Akiyama M, Kokame K, Soejima K, Miyata T
    • 雑誌名

      J Biochem

      巻: 152 ページ: 251-258

    • DOI

      10.1093/jb/mvs066

    • 査読あり
  • [備考] 秋山 正志 |分子病態部|組織・各部の紹介|国立循環器病研究センター研究所

    • URL

      http://www.ncvc.go.jp/res/divisions/etiology/akiyama.html

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公開日: 2014-07-24  

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