研究課題/領域番号 |
23570158
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
喜多村 直実 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (80107424)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 肝細胞増殖因子 / がん細胞 / 細胞周期 / 細胞内増殖制御因子 |
研究概要 |
肝細胞増殖因子(HGF)によるがん細胞の増殖制御に関わる新しい制御因子について、HGFにより増殖が抑制されるヒト肝がん由来細胞株HepG2を用いて解析を行い以下の結果を得た。1、 HepG2細胞をHGFで刺激した時にCdkインヒビターであるp27の発現が上昇し、この上昇は蛋白質分解の抑制によることがわかっている。そこでp27のユビキチン化に関わるE3リガーゼとして知られているSCFSkp2の構成成分(Skp2、Skp1、Cul-1、Rbx-1)について発現の変化を調べた。その結果、Skp2の発現が減少することを見出した。しかしSkp2を過剰発現してもp27の発現上昇は変わらなかったことから、p27の分解抑制にはSkp2の発現減少は関与せず、Skp2はp27の分解以外の過程で機能する新しい制御因子であると考えられる。2、 HGFで刺激したHepG2細胞において発現量が変化するmicroRNA(miRNA)をマイクロアレイを用いて探索したところ、細胞増殖制御に関わるmiR-92bの発現が減少し、またmiR-137の発現が上昇することを見出した。さらにmiR-92bのターゲットであるCdkインヒビターp57KIP2の発現が、HGF刺激により上昇することを見出した。したがってmiR-92bの発現減少がp57の発現上昇を導き、HepG2細胞の増殖制御に関わる可能性が示唆された。3、 HepG2細胞をHGFで48時間以上刺激すると増殖の抑制は不可逆的になる。この不可逆的な増殖抑制にはエピジェネティックなゲノム変化が関わっていると考えられることから、ヒストンのメチル化について解析を行った。その結果、H3K9me3の核内局在が変化することを見出した。この局在変化がクロマチン構造の変化を導き増殖制御因子の発現を変化することにより増殖抑制が不可逆となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞増殖因子(HGF)によるHepG2細胞の増殖制御に関わる新しい制御因子について、研究計画に基づいて解析を行った結果、新しい制御因子の可能性のある分子としてSkp2とmiR-92bを見出した。またヒストンのメチル化の局在変化が不可逆的増殖抑制に関わる可能性を見出した。したがって、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見出された制御因子の可能性のある分子が実際に制御因子として機能するかについて解析を進めていく。またヒストンのメチル化の局在変化がどのようなメカニズムにより制御因子の発現変化等に関わり不可逆的増殖抑制を導くのかについて解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では多くの消耗品を必要とするので、経費のほとんどは消耗品費として使用する予定である。
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