研究課題
ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γ の構造解析を目指した。初年度(23年度)は、タグを利用しないα3β3γの精製法を確立し、4つの異なる結晶化条件を決定した。24年度は、実験室レベルの回折実験を行ったが、もっともよい分解能を与える結晶で6.5オングストローム程度であった。次に、得られている結晶を用いて、放射光施設で回折実験を行った。しかし、放射光施設のビームでも、分解能の向上は見られなかった。分解能を向上させるため、結晶を浸す溶液の沈殿剤等の濃度を上げることで結晶から水分子を除き、分解能を向上させる方法(脱水操作)を試みた。今のところ分解能の向上は見られていない。
3: やや遅れている
タンパク質の結晶化は、さまざまな結晶化条件を、試行錯誤しながら行うのが一般的であるため、当初の計画以上に早く進む場合もあるが、計画が大幅に遅れる場合も多い。初年度(23年度)は、計画通りに研究が進んでいると思われたが、24年度は計画通りに研究が進んでいるとは言い難い。最適な結晶化条件の探索と同時に、結晶化に適した変異α3β3γ 複合体の作成も必要であると考えられる。
牛ミトコンドリアや大腸菌由来のα3β3γ 複合体では、αサブユニットのN末端数十アミノ酸はひも状になっている。このひも状の部分を切断することで、分子のパッキングが良くなり、分解能が向上すると考えられる。そこで、ひも状のアミノ酸配列を欠損させた変異体を作製・精製し、結晶化条件の最適化を行う。
次年度(平成25年度)は、結晶化に適した変異体の作製に必要な遺伝子実験試薬およびタンパク質精製に必要な生化学実験試薬、カラム樹脂の購入に使用する。また、放射光施設や学会などへの旅費も計上する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
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