研究課題
ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γεの構造解析を目指した。初年度(23年度)は、タグを利用しないα3β3γεの精製法を確立し、4つの異なる結晶化条件を決定した。24年度は、実験室レベルの回折実験を行ったが、挿入配列とεサブユニットの相互作用の詳細を議論できるだけの分解能ではなかった。分解能を向上させるため、結晶を浸す溶液の沈殿剤等の濃度を上げることで結晶から水分子を除き、分解能を向上させる方法(脱水操作)なども試みた。牛ミトコンドリアや大腸菌由来のα3β3γ 複合体では、αサブユニットのN末端数十アミノ酸はひも状になっている。そこで、25年度は、このひも状の部分を切断した変異体を作製・精製し、結晶化条件の最適化を行った。上記の研究計画と並行して、葉緑体型ATP合成酵素の活性制御を生化学的視点から理解することを目指し、変異体を用いた生化学実験を行った。葉緑体型ATP合成酵素の活性制御に重要な挿入配列は触媒部位であるβサブユニットから遠く離れた部位にあり、直接影響を与えるようには見えない。触媒部位サブユニットと直接相互作用するのは、γサブユニットにあるN末端およびC末端のαヘリックスのコイルドコイル構造であるので、これらのαヘリックスが相対的にずれることで、活性に変化が生じるのではないかと推定した。この仮説を検証するため、αヘリックスにCysを導入し、S-S架橋をかける実験を行い、架橋により酵素活性が大きく上昇する変異体を見いだした。
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