研究課題
宿主内に侵入した細菌は,宿主内の環境および免疫に曝される。細菌はこれを感知して遺伝子発現様式を変化させ,環境へ適応するとともに,免疫を回避する仕組みを発動する。本研究では,感染モデル系を利用して,宿主内で発現変動する細菌遺伝子を同定するとともにその働きを解析して,細菌による感染維持機構の解明を目指した。当該年度は,宿主にキイロショウジョウバエ,細菌に大腸菌を用いた敗血症モデルにより,以下の解析を行った。1)感染時に活性亢進する二成分制御系因子の遺伝子の解析宿主内で高プロモーター活性を示す二成分制御系因子群について,感染に伴う遺伝子発現変化をmRNAレベルで解析した。2種類の因子が,感染後の初期に一過性に発現亢進することがわかった。2)感染時に活性亢進する二成分制御系因子の感染維持への働き上述した因子群の遺伝子欠損菌株を用い,宿主体腔への注入感染を行った。その結果,親菌株と比較して,宿主殺傷能が亢進した1株,低下した2株が見つかった。欠損遺伝子を外来導入することにより,これらの性質が補完したことから,当該因子が宿主病原性に影響を与えると考えられた。また,これらの遺伝子は,宿主食細胞による貪食には影響を与えず,その働きは宿主食細胞からの回避以外の方法で,宿主への病原性に働くと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度以降に予定していた「宿主内での細菌遺伝子制御機構」と「免疫回避に働く遺伝子の同定と働き」について,それぞれ一定の成果が得られた。前者では,宿主内でプロモーター活性が亢進する二成分制御系因子群について,mRNAレベルで発現亢進する種類が見つかった。後者について,宿主への病原性を亢進または抑制に働く遺伝子がそれぞれ見つかった。これらのことより,申請書に記載した研究目的に対して予定通りに進行していると評価される。
引き続き申請書の計画に沿って,宿主内で発現変動する遺伝子の発現制御機構と,これらの宿主病原性と感染維持への働きを解析する。これまでに同定された因子群は,いずれも遺伝子発現制御因子であり,支配下遺伝子群の発現を調節している。したがって,各因子の下流遺伝子の中に,細菌の感染維持や宿主病原性を担う実行分子が存在するはずである。そのために,支配下遺伝子群の欠損菌株の中から,上位因子と同様の表現型を示すものを見つける。また,二成分制御系因子欠損菌株にその支配下遺伝子を強制発現させて,表現型が回復する遺伝子を見出す。このようにして選ばれた実行分子候補について,宿主免疫欠損体群での働きを調べることで,実行分子が標的とする宿主免疫反応を明らかにする。
該当なし
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