研究課題
宿主内に侵入した細菌は,宿主内環境や宿主因子を感知してその遺伝子発現を変化させ,目宿主免疫を回避したり宿主殺傷性を調節することにより,感染維持を狙う。この研究計画では,感染状態の細菌で変動する遺伝子発現制御因子を網羅的に解析し,その中から上述の生理作用を担う実行因子を見出し,その働きの理解を目指した。in vitroおよびin vivo感染モデル系,および細胞生化学的な手法を駆使して以下を解析した。1)感染時に活性亢進する二成分遺伝子発現制御系因子群の解析大腸菌の情報経路は二成分遺伝子発現制御系とよばれる膜受容体と細胞内転写因子の組み合わせで構成され,約50経路が存在する。これまでの解析から得た感染時に活性化する複数経路が,宿主内での感染維持や病原性亢進に働くことが明らかになった。このうちのひとつは,細菌の感染維持の亢進と宿主への病原性の抑制という相反する二種類の働きを有していた。続いて本経路の下流遺伝子群のスクリーニングを行い,このような働きを担う実行因子候補となる遺伝子群を得た。2)感染時に発現亢進するシグマ因子の解析大腸菌のRNA合成酵素サブユニットのうち,遺伝子プロモーター配列に結合するシグマ因子群のうち,シグマSと呼ばれるサブユニットについて,細菌の感染持続への必要性と,その分子機構を調べた。この因子はマクロファージに貪食された細菌で発現亢進し,下流の抗ラジカル性遺伝子の発現を導いて殺菌を逃れて感染維持する機構が明らかになった。
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