研究課題
細胞内タンパク質輸送は輸送小胞を介して行われ、小胞の形成・運搬・融合の各過程は特定の分子群により制御されている。低分子量GTPaseのARFは輸送小胞の形成に、Rabは主に輸送小胞のターゲティングや融合を調節する。本研究ではTGN以降の輸送経路における低分子量GTPase間のクロストークの分子機構を明らかにすることを目的とする。前年度ではARF1とARF3がエンドソームに局在し、エンドソームから細胞膜への輸送に関与することを明らかにした。当該年度では、新たにARF1とARF4がエンドソームを介する輸送経路に関与することを明らかにした。これまでに、5種類のヒトのARFのうち、ARF1、ARF3、ARF4、ARF5は主にゴルジ体で機能することが知られていた。興味深いことに、ARF1とARF4の同時に発現抑制した細胞ではRab4やRab11が存在するエンドソームがtubule化することを見出した。ARF1とARF4の同時の発現抑制細胞では、エンドソームからゴルジ体への輸送が阻害されることが分かった。ARF1とARF3あるいはARF1とARF4の発現抑制細胞においてエンドソームのtubule化が観察されたが、前者の細胞ではエンドソームから細胞膜へのリサイクリング経路が、後者の細胞ではエンドソームからゴルジ体への経路が阻害された。したがって、本研究ではARF1とARF3、ARF1とARF4の異なるペアーがエンドソームを経由する異なる輸送経路を制御していることを示し、ARFの輸送経路の制御における新しい分子メカニズムが示唆した。この異なるARFのペアーは特異的な膜マイクロドメインを形成し、機能すると考えられる。したがって、各ARFのペアーの下流で働く特異的なエフェクタータンパク質を同定することでARFの特異的な輸送経路の制御機構を明らかにできると考えている。
2: おおむね順調に進展している
エンドソームに局在する低分子量GTPaseのクロストークのメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、ゴルジ体に局在すると知られていたARF1とARF3とARF4がエンドソームで機能することを明らかにした。さらに、ARF1とARF3のペアーとARF1とARF4のペアーがエンドソームから異なる輸送経路を調節していることを明らかにした。異なるARFのペアーが特異的なエフェクタータンパク質を制御することにより異なる輸送経路を制御していると考えられる。ARFペアーの異なる機能の発見は、積荷タンパク質の選別輸送機構を理解するうえで大変ポジティブな進歩である。
これまでの研究により、ARF1とARF3、ARF1とARF4がそれぞれエンドソームの形態維持に関与するが、前者はエンドソームから細胞膜への輸送経路に関与するが、後者はエンドソームからゴルジ体への輸送経路に関与することが明らかとなった。この異なるARFのペアーは特異的な膜マイクロドメインを形成し、機能すると考えられる。したがって、各ARFのペアーの下流で働く特異的なエフェクタータンパク質を同定することでARFの特異的な輸送経路の制御機構を明らかにできると考えている。今後は異なるARFのペアーの特異的なエフェクタータンパク質はなにか、またRabと共通するエフェクターを介してどのようにRabと機能的にリンクしているのかを調べていく。
論文投稿費として20万円、研究打ち合わせや学会での研究成果発表の旅費として10万円、その他の費用として5万円、そのほかはすべて研究試薬、研究器具等の購入に使用する予定である。
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