研究概要 |
細胞内タンパク質輸送は輸送小胞を介して行われ、小胞の形成・運搬・融合の各過程は特定の分子群により制御されている。低分子量GTPaseのARFファミリーは輸送小胞の形成に、Rabは主に輸送小胞のターゲティングや融合を調節する。本研究ではTGN以降の輸送経路における低分子量GTPase間のクロストークの分子機構を明らかにすることを目的とした。 申請者は、これまでにゴルジ体に局在しゴルジ体を中心として小胞輸送に関与するとされていたARF1, ARF3, ARF4がリサイクリングエンドソームを中心とする小胞輸送に関与し、さらに異なるARFのペアーがリサイクリングエンドソームから異なる輸送経路を調節することを明らかにした。 ARF1とARF3あるいは ARF1とARF4のペアーをノックダウンするとRab4やRab11の局在するリサイクリングエンドソームがtubule化することを見出した。したがって、これらの各ペアーがリサイクリングエンドソームで小胞の形成に関与することが示唆された。さらに、ARF1/ARF3はリサイクリングエンドソームから細胞膜へのリサイクル経路を、ARF1/ARF4はリサイクリングエンドソームからゴルジ体への輸送経路を調節することを明らかにした。すなわち、ARF1は共有するものの異なるペアーがredundantに働き、リサイクリングエンドソームから異なる輸送経路を調節していることがわかった。ARF1/ARF4のペアーのみがAP-1というクラスリンアダプタータンパク質をエンドソーム膜にリクルートすることを見出した。AP-1はエンドソームからゴルジ体への輸送経路に関与すことが知られている。したがって、ARF1/3, ARF1/4のペアーは異なるエフェクタータンパク質をリクルートすることにより、特異的な膜マイクロドメインを形成して異なる輸送経路を調節することが示唆された。
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