研究課題/領域番号 |
23570163
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石水 毅 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30314355)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖鎖 / N-結合型糖鎖 / 植物 / マンノシダーゼ / フコシダーゼ / キシロシダーゼ / 分解経路 |
研究概要 |
植物N型糖鎖の分解経路は、これまで未解明であった。申請者がエンド-β-マンノシダーゼを同定し、その遺伝子のクローニング、基質特異性解析を行ったことで、分解経路が解明され始めた。この酵素の基質特異性は厳密で、ハイマンノース型糖鎖に液胞α-マンノシダーゼが作用して優先的に生じる糖鎖のみを基質とし、分解する。この分解経路は植物特有のもので、先に解明されていた哺乳動物N型糖鎖分解経路とは異なるものであった。植物N型糖鎖の分解に関わる酵素は、エンド-β-マンノシダーゼしか遺伝子クローニングされておらず、解明が遅れている。 本研究は、植物N型糖鎖の分解経路を解明することを目的として、分解に関わる酵素遺伝子の同定を計画した。平成23年度は、エンド-β-マンノシダーゼと基質特性が相補的な液胞α-マンノシダーゼの遺伝子同定を試みた。シロイヌナズナから液胞α-マンノシダーゼの候補遺伝子を3種類見いだした。これらの候補遺伝子がコードするタンパク質は液胞で発現することが既に報告されている。これらの遺伝子をメタノール資化性酵母の発現ベクターに組み込み、タンパク質の発現を行った。タンパク質は発現したものの、活性をもつタンパク質はこれまでに得られていない。一方、これらの遺伝子ノックアウト(T-DNA挿入変異体)シロイヌナズナでは、顕著にα-マンノシダーゼ活性が減少し、これらの遺伝子がα-マンノシダーゼをコードしていることを示した。 さらに、申請計画にはなかったが、植物N型糖鎖分解に関わるα1,3-フコシダーゼの候補遺伝子がコードするタンパク質のメタノール資化性酵母での発現に成功した。現在、このタンパク質の精製を行っており、基質特異性解析を行い、植物N型糖鎖分解のどの経路に関わるか、解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成23年度は液胞α-マンノシダーゼとβ1,2-キシロシダーゼの遺伝子同定に向けた研究を行う予定であった。しかし、他の研究室でβ1,2-キシロシダーゼの遺伝子クローニングがされたとの情報が入ったため、β1,2-キシロシダーゼでなく、α1,3-フコシダーゼの遺伝子同定に向けた研究を進めた。液胞α-マンノシダーゼ、α1,3-フコシダーゼの遺伝子同定に向けた実験が進んでいるため、区分2の達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、基本的に申請した研究計画に沿って、植物N型糖鎖分解経路に関わる酵素遺伝子の同定を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は、目的タンパク質の発現が進行中であるため生じたものである。そのため、次年度研究費と共に、23年度に進めた液胞α-マンノシダーゼ、α1,3-フコシダーゼの発現のための実験、遺伝子同定に向けた実験に用いる。具体的には、液胞α-マンノシダーゼを植物培養細胞で発現させるための薬品類、α1,3-フコシダーゼの発現、精製、基質特異性にかかる薬品類に使用する。 次年度の研究費については、植物N型糖鎖分解経路に関わる酵素遺伝子の同定のための実験にかかる一般試薬、プラスチック器具類に80万円使用する。DNA塩基配列解析、タンパク質アミノ酸配列解析などの委託分析費用等に20万円を充てる。
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