研究課題/領域番号 |
23570163
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石水 毅 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30314355)
|
キーワード | 糖鎖 / N型糖鎖 / 植物 / フコシダーゼ / キシロシダーゼ / 分解経路 |
研究概要 |
植物N型糖鎖の分解経路は、これまで未解明であった。申請者がエンド-β-マンノシダーゼを同定し、その遺伝子のクローニング、基質特異性解析を行ったことで、分解経路が解明され始めた。この酵素の基質特異性は厳密で、ハイマンノース型糖鎖に液胞α-マンノシダーゼが作用して優先的に生じる糖鎖のみを基質とし、分解する。この分解経路は植物特有のもので、先に解明されていた哺乳動物N型糖鎖分解経路とは異なるものであった。植物N型糖鎖の分解に関わる酵素は、エンド-β-マンノシダーゼしか遺伝子クローニングされておらず、解明が遅れている。 本研究は、植物N型糖鎖の分解経路を解明することを目的として、分解に関わる酵素遺伝子を同定するものである。平成24年度は、植物コンプレックス型糖鎖の分解に関与するα1,3-フコシダーゼの同定を行った。植物フコシダーゼの研究は40年ほど行われてきているが、植物コンプレックス型糖鎖に作用するα1,3-フコシダーゼは未同定である。 シロイヌナズナのα1,3-フコシダーゼ候補遺伝子がコードするタンパク質をメタノール資化性酵母で発現させた。本酵素の基質となり得る植物コンプレックス型糖鎖の一連の部分分解物を調製し、本酵素を作用させた。本酵素は当初の予想とは異なり、植物コンプレックス型糖鎖の分解が進んだ短い糖鎖であるGlcNAcb1-4(Fuca1-3)GlcNAcにのみ作用することが明らかになった。初めて植物コンプレックス型糖鎖に作用するα1,3-フコシダーゼを同定できたことで、植物コンプレックス型糖鎖の分解経路を描くことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、平成24年度は植物コンプレックス型糖鎖に作用するβ1,2-キシロシダーゼの遺伝子同定に向けた研究を行う予定であった。しかし、α1,3-フコシダーゼ候補タンパク質の発現が順調に進んだため、α1,3-フコシダーゼの同定を進めた。このα1,3-フコシダーゼの遺伝子同定に向けた実験が進んでいるため、区分2の達成度とした。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、基本的に申請した研究計画に沿って、植物N型糖鎖分解経路に関わる酵素遺伝子の同定を進める。 植物コンプレックス型糖鎖に作用するα1,3-フコシダーゼについては、さらなる詳細な基質特異性解析を進め、植物コンプレックス型糖鎖の分解におけるこの酵素の役割を解明する。さらに、この酵素のノックアウト植物体の解析を進め、この酵素による糖鎖分解の植物体への影響を調査する。 植物コンプレックス型糖鎖に作用するβ1,2-キシロシダーゼの同定を進める。シロイヌナズナのゲノム情報を用いて、候補遺伝子を挙げ、それらがコードするタンパク質の酵母での発現を試みる。昨年度までに調製した植物コンプレックス型糖鎖の部分分解物を作用させ、基質特性を明らかにし、植物コンプレックス型糖鎖の分解経路を解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の経費執行はほぼ計画通りであったが、より効率的に物品購入を行った結果、端数が未使用金として生じた。次年度はこの端数も含め、上で述べた今後の研究の推進方策に従い、使用する予定である。 次年度に使用する予定の研究費は、目的タンパク質の酵母での発現、糖鎖の調製、遺伝子ノックアウト植物体の解析に必要な薬品類、プラスチック器具類の費用(80万円)として用いる。DNA塩基配列解析、タンパク質アミノ酸配列解析などの委託分析費用等に10万円を充てる。学術研究集会における発表のための旅費に10万円を用いる。
|