研究概要 |
植物糖タンパク質のN型糖鎖は、ハイマンノース型とα1,3-フコース残基を有する植物コンプレックス型に大別される。これらは最終的に液胞で分解される。これまでに、エンド-β-マンノシダーゼを同定し、その基質特異性解析から、植物特有のハイマンノース型糖鎖の分解経路を明らかにしていた。しかし、植物コンプレックス型糖鎖の分解経路は、未解明であった。 昨年度までに、植物コンプレックス型糖鎖の分解に関与するα1,3-フコシダーゼの遺伝子を同定した。さらに、基質特異性解析を行い、植物コンプレックス型糖鎖の分解経路を初めて提出した。今年度は、この酵素が関与する植物コンプレックス型糖鎖の分解経路を明確にするために、α1,3-フコシダーゼ遺伝子ノックアウト植物(T-DNA挿入変異体)の解析を行った。変異体では、はっきりとした表現型の変化は観察されず、α1,3-フコシダーゼによる糖鎖分解は、通常条件下では生育に関与しなかった。変異体はα1,3-フコシダーゼ活性が検出されず、この遺伝子がα1,3-フコシダーゼをコードすることを裏付けた。変異体のN型糖鎖は、α1,3-フコシダーゼが基質とするGlcNAcβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcが分解されずに残っていた。これは、α1,3-フコシダーゼがGlcNAcβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcを基質とするという生化学的解析の結果と一致し、植物コンプレックス型糖鎖の分解経路を明確にできた。また、変異体では、他の糖鎖も分解されずに残っており、糖タンパク質糖鎖の分解全体が滞っていた。これは、糖タンパク質糖鎖の分解には複数の酵素が連携していることを示唆している。
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