研究課題/領域番号 |
23570164
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥村 宣明 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (20224173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | carnosine / dipeptidase / histidine / histamin / metallopeptidase |
研究概要 |
カルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン)は、哺乳類の生体内に存在するカルノシン含有ジペプチドで、骨格筋には10mM、脳にも数mM程度存在する。亜鉛などをキレートする作用、効酸化作用、神経伝達物質やホルモンとしての作用、またアミノ酸等の前駆体として機能する作用が考えられているが、その機能、ならびに生体内での合成と分解のメカニズムは不明の点が多く残されている。最近、CNDP2以外にもカルノシンの合成と分解に関る酵素が報告され、カルノシンの機能解明の新たな展開を迎えつつある。本研究では、カルノシンの分解、合成に関る酵素、特にカルノシン分解酵素CNDP2ならびにCNDP1を中心として、立体構造、酵素的性質、組織分布、細胞内分布、ならびに各種の細胞に対する影響などの解析を行い、カルノシンの生体内での機能を明らかにすることを目的として研究を行う。 我々はこれまでに、CNDP2が脳以外にも腎臓や小腸に存在することを明らかにしたが、本年度はさらに、腎臓特異的蛋白質と二重染色することにより、腎臓の尿細管の中における発現部位の局在について解析を行った。また、CNDP2の類縁蛋白質であるCNDP1について、大腸菌で発現させ、ウサギで抗体を作成し、特異的に反応する抗血清を得た。 また、生化学的解析では、CNDP2の基質特異性について検討し、条件によってこれまでの知見と異なることが明らかになり、その原因と意義について検討を進めている。また、CN2の反応機構についても引き続き解析を進めている。一方、CNDP1は現在、大腸菌でインクルージョンボディーから変性ー再生によって可溶性の酵素が少量が取れているが、酵素的性質の解析までには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNDP2の免疫組織化学的解析に関しては、現在二重染色でマウス腎臓内で発現する種類の特定を行って結果を得ており、現在さらに用いる抗体の種類を増やして検討中である。CNDP2の基質特異性や金属依存性はこれまで明確ではなかったが、ジペプチドのライブラリーを作成してこれを基質として用いることによって基質特異性の解析を行い、これまで明らかではなかった反応条件と基質特異性の関係について明らかにすることができた。また、質量分析計などを用いた反応機構の解析により、ダイマー形成が活性に必須であることを明らかにした。また、CNDP1についても、大腸菌で発現させ、抗体を作成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
CNDP2の機能解析には組織分布や基質特異性の解析が必須であり、今後も引き続き行うが、特にCNDP2と同一ファミリーの蛋白質であるCNDP1は、CNDP1と同様にカルノシンを分解する活性があり、カルノシンに対する特異性がより高いことも考えられるので、これとの比較解析により機能の差異を明確にしながら解析を進めていく。そのためにはCNDP1の可溶性標品が必要であるが、CNDP2と同様の方法では得ることは困難であるため、発現系の見直し、リフォールディング等を試みる。また、細胞内でのCNDP1、CNDP2の活性を検討するための哺乳動物細胞を用いた実験系を検討する。 また、最近カルノシン合成酵素がクローニングされたが、詳細な解析はなされていない。そこで、カルノシン合成酵素の細胞における機能解析を行うとともに、その抗体の作成を行い、生体内におけるカルノシン合成細胞の分布とその意義を明らかにする。これらによって、カルノシンを含めたジペプチドの合成と分解の全体像を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として、CNDP1、CNDP2ならびにカルノシン合成酵素の大腸菌における発現と精製、ならびに免疫組織化学に必要な試薬類とプラスチック器具類、ならびに小型の機器類を購入する予定である。また、DNAシークエンス解析、およびウサギによる抗体の作成は外注にて行う予定にしている。
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