研究課題/領域番号 |
23570165
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有賀 洋子 (木股 洋子) 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (60255429)
|
研究分担者 |
長谷 俊治 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00127276)
|
キーワード | フェレドキシン / 光合成電子伝達 / 蛋白質間相互作用 / 葉緑体 |
研究概要 |
本研究は、光合成電子伝達系の末端に位置するモバイル電子キャリアーである、フェレドキシン (Fd) からパートナー蛋白質群への電子分配制御のメカニズム解明を目的とし、蛋白質間架橋や相互作用変異体を用いたin vitro系及び、葉緑体を用いたin vivo系での電子伝達や相互作用制御の解析を行うものである。本年度は両者の系においてそれぞれ新規な知見が得られた。 1.前年度の実績2で報告した、2つのパートナー蛋白質への電子伝達活性に大きく異なった影響を及ぼすFd酸化還元中心近傍の疎水性領域で保存されたアミノ酸残基に注目し、こうした現象を説明するための構造的・物理化学的基盤を調べる為に、NMRによる蛋白質間相互作用部位解析と等温滴定型熱量測定計 (ITC) を用いた熱力学的解析を行った。その結果、これまでパートナー蛋白質との結合において重要とされていた静電的相互作用に加え、酸化還元中心近傍の疎水領域の残基が結合の強さや結合配向のfine-tuningに重要と思われた。そしてこの残基の働き、つまり電子伝達や結合への寄与がパートナー蛋白質によって異なることから、溶媒環境等の 状況に応じた電子分配制御の可能性が示唆された(論文作成中)。 2. パートナー蛋白質群への電子分配を制御するin vivoでのメカニズムに関する知見を得るため、単離葉緑体におけるパートナー蛋白質群の存在様式解析を行った。近年Fdパートナー蛋白質の一つであるFd-NADP+還元酵素について光条件に応じた膜画分への移行に関わる相互作用蛋白質の同定を含む詳細な解析がなされており、本研究ではFdパートナー蛋白質を含む3つの葉緑体内窒素同化系酵素で、各酵素に特有な高次複合体の存在とその解離会合の制御に関する知見を得た(論文作成中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、葉緑体内でのFdとそのパートナー蛋白質群間の電子分配制御メカニズムの解明である。 本年度はこれに関して、 1)in vitro系での構造的・熱力学的解析を用いた蛋白質の物性からの物理化学的アプローチと、 2)in vivoに近い単離葉緑体を用いた複雑系での存在様式、 といった異なる解析法によって、今まで行われていなかった切り口で上記メカニズムへの新規且つ総合的な知見が得られたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果に基づき、上記2つのアプローチで更に以下の事項の解析を進める。 1. 上記Fd疎水領域変異体とパートナー蛋白質との結合の違いをもたらす物理化学的因子を更に詳細に調べる。この領域での結合の熱力学的変化に大きく寄与すると示唆された結合に伴う蛋白質界面での水の排除効果や、結合と解離速度のバランス(kon, koff)などをひきつづきITCや表面プラズモン共鳴測定などの所有装置を用いて測定する。結合様式の詳細な構造的違いをNMRとX線結晶構造解析にて明らかにする。 2. 3つの葉緑体内窒素同化系酵素で得られた各酵素に特有な高次複合体の解離会合が生理的な環境変化(光、栄養源の増減)に伴いどのように変動するか、更にそれに伴いFdとの相互作用にどのような変化をもたらすかを解析し、電子分配制御との関連を解明して行く。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由については、主に24年度末に購入した植物育成装置のオプション部分(LED照明ユニット)が予定より減額された分(約20万円)が今年度に繰り越されたためと、論文投稿費、印刷費が予定よりかからなかったために発生した。 次年度研究費は、今年度着手した葉緑体の系での蛋白質間相互作用実験のためのNative 電気泳動用ゲルや試薬、ウエスタン解析用発光試薬、物理化学的実験のための組みかえ蛋白質の大量調製用試薬の購入費に使用したい。
|