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2011 年度 実施状況報告書

核内に局在して発がんシグナルを制御する新規低分子量G蛋白質の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 23570166
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

多胡 憲治  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (20306111)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードシグナル伝達系
研究概要

正常細胞ががん化する過程における、シグナル伝達系はこれまで多くの研究者によって研究されており、例えば低分子量GTP結合タンパク質(低分子量G蛋白質)Rasによる細胞の細胞の増殖、生存シグナルの活性化などが明らかにされている。κB-Rasは転写因子NF-κBを阻害するRasファミリーの一つとして同定された。これまでに私達はκB-Rasが、核と細胞質の間を行き来する蛋白質であることを見出し、NF-κBの活性化シグナルにおいて、転写活性化に重要なp300/CBPとNF-κBとの結合をκB-Rasが抑制する阻害メカニズムを明らかにしてきた。さらに最近、私達はκB-Rasが、がん遺伝子Ras (G12V) を起点とした発がんシグナルにおいて促進的な役割を担っていることを見出した。興味深いことにこのとき、κB-RasはGTP結合型である必要があり、GDP結合型κB-Rasは発がんシグナルに対して促進的な効果を示さないことも明らかになった。また、κB-Rasを介した発がんシグナルを明らかにするため、私達はTAP法 (Tandem Affinity Purification 法) を用いて、κB-Rasの蛋白質複合体を精製し、質量分析法によりκB-Ras結合分子を同定した。その結果、TRB3、SmgGDS (Rap1GDS) およびDDB1を同定した。TRB3はRas (G12V) による発がんシグナルに対して抑制的に作用するのに対して、DDB1はむしろRas (G12V) による形質転換能を促進するという逆の効果を示した。κB-Rasはこれらの結合分子に対する機能制御を介して、Ras (G12V) による発がんシグナルに関わっている可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の申請時に同定されたκB-Ras結合タンパク質のうち、STK38およびANKRD6に関してはκB-Rasとの相互作用を確認することができなかった。しかしながら、その後のκB-Rasタンパク質複合体から新たに同定されたTRB3、DDB1についてはκB-Rasとの相互作用が確認された上、Ras (G12V) によるマウス線維芽細胞の形質転換に深く関わっていることも明らかにされてきた。また、現在解析を進めているκB-Ras結合分子であるsmgGDS、TRB3、DDB1についてはレトロウイルスを用いた発現系により過剰発現および、shRNAを用いたノックダウン系の構築が完了している。以上のことから、現在まで本研究は概ね計画通りに進行していると言える。

今後の研究の推進方策

これまでに、κB-RasがRas (G12V) 発現細胞の形質転換に必須であることは明らかになったが、その分子機構は不明な点が多い。今回、Ras (G12V) によるマウス線維芽細胞の形質転換に影響を与えるTRB3とDDB1についてκB-Rasとの機能的な関連性を明らかにすることにより、κB-Rasがどのように発がんシグナルに関わっているのかを明らかにしていくことを計画している。また、smgGDS、TRB3、DDB1以外にも同定されたκB-Ras結合タンパク質の中に、発がんとの関わりが指摘されるRNA結合タンパク質も含まれており、それらの機能解析を網羅的に進めることにより、Ras (G12V)- κB-Rasシグナルの発がん誘導機構の全貌を紐解いていく予定である。さらに、既に樹立されているヒト由来腫瘍細胞株でとくにRas遺伝子に変異を有するものに関して、κB-Rasの関与を明らかにすることをめざし、解析を行う予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度は、各種κB-Ras結合タンパク質を過剰発現、あるいはノックダウンした細胞株を樹立し、シグナル伝達機構の解析を行う。さらにこれらの細胞株を用いて軟寒天培地を用いたコロニー形成アッセイを行い、各種κB-Ras結合タンパク質の発がんシグナルへの関与を明らかにする。また、これらの解析が順調に進行した場合には、ヌードマウスを用いた生体内における腫瘍形成能の評価を計画している。これらを考慮し、分子生物学的試薬代として30万円、動物購入・飼育代として30万円を使用する ことを計画している。また、同定分子の特異的抗体の購入のために、一般試薬代として30万円を使用することを計画している。解析に はすべて培養細胞を用いるため、プラスチック器具代および細胞培養用試薬代として40万円を使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Phosphorylation of doublecortin by protein kinase a orchestrates microtubule and actin dynamics to promote neuronal progenitor cell migration.2012

    • 著者名/発表者名
      Toriyama M, Mizuno N, Fukami T, Iguchi T, Toriyama M, Tago K, Itoh H.
    • 雑誌名

      J Biol Chem.

      巻: 287 (16) ページ: 12691-12702

    • DOI

      10.1074/jbc.M111.316307

  • [雑誌論文] Aurora kinase A critically contributes to the resistance to anti-cancer drug cisplatin in JAK2 V617F mutant-induced transformed cells.2011

    • 著者名/発表者名
      Sumi K, Tago K, Kasahara T, Funakoshi-Tago M
    • 雑誌名

      FEBS Lett.

      巻: 585 (12) ページ: 1884-1890

    • DOI

      10.1016/j.febslet.2011.04.068

  • [雑誌論文] Anti-inflammatory activity of structurally related flavonoids, Apigenin, Luteolin and Fisetin.2011

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi-Tago M, Nakamura K, Tago K, Mashino T, Kasahara T
    • 雑誌名

      Int Immunopharmacol.

      巻: 11 (9) ページ: 1150-1159

    • DOI

      10.1016/j.intimp.2011.03.012

  • [雑誌論文] Akt activation through the phosphorylation of erythropoietin receptor at tyrosine 479 is required for myeloproliferative disorder-associated JAK2 V617F mutant-induced cellular transformation.2011

    • 著者名/発表者名
      Kamishimoto J, Tago K, Kasahara T, Funakoshi-Tago M.
    • 雑誌名

      Cell Signal.

      巻: 23 (5) ページ: 849-856

    • DOI

      10.1016/j.cellsig.2011.01.009

  • [雑誌論文] JAK2 is an important signal transducer in IL-33-induced NF-κB activation.2011

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi-Tago M, Tago K, Sato Y, Tominaga S, Kasahara T.
    • 雑誌名

      Cell Signal.

      巻: 23 (2) ページ: 363-370

    • DOI

      10.1016/j.cellsig.2010.10.006

  • [学会発表] Gタンパク質シグナルにより制御されるSUMO化とその分子機構の解析2011

    • 著者名/発表者名
      多胡憲治、多胡めぐみ、Susanna Chiocca、水野憲一、伊東広
    • 学会等名
      第84回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都国際会議場
    • 年月日
      2011年9月24日
  • [学会発表] Functional involvement of an atypical nuclear-cytoplasmic small GTPase κB-Ras in oncogenic signaling pathway2011

    • 著者名/発表者名
      多胡憲治、多胡めぐみ、深尾陽一、杉山直幸、冨田勝、水野憲一、伊東広
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年12月16日

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公開日: 2013-07-10  

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