研究課題
本研究では、二次免疫応答時に産生されるIgM型の後期抗体について、構造や機能の特徴と産生メカニズムの解明を目的とする。以下に25年度の研究成果を要約する。Affinity matrix法による形質細胞分離法を改良した。磁気ビーズを用いた選択と形質細胞マーカーによる染色を組み合わせることで、抗原特異的形質細胞をセルソーターで濃縮できた。純度は最大90%程度であり未だ改善の余地がある。組換えIgM型後期抗体の補体活性化をヒツジ赤血球溶血反応によって測定した。抗原親和性の低いIgMでも補体活性化が見られ、低親和性でありながらも機能的な抗体であることが示された。免疫したマウスの辺縁帯B細胞やB-1細胞をフローサイトメトリーで解析したが、抗原特異的BCR発現細胞は検出できず、このような細胞がIgM型後期抗体を産生するとは考え難い。記憶B細胞中に低親和性IgM型B細胞受容体(BCR)を発現している細胞の存在が示され、これがIgM型後期抗体産生に重要であると考えている。J558L細胞株を用いて低親和性IgM型BCR発現細胞株を作製した。抗原で刺激すると、高親和性BCRよりは弱いがCD79aとCD79bのリン酸化が見られ、BCRとして機能しうることが示された。研究期間全体としては、形質細胞の抗体遺伝子解析により、IgM型後期抗体レパートリーには初期抗体やIgG型後期抗体とは異なる特徴を持つものが多く含まれること、このタイプのIgM型抗体は非常に低い抗原親和性を示すこと、補体活性化能は高いことを明らかにした。このIgM型後期抗体は記憶B細胞に由来することが考えられ、このような低親和性IgM型BCRを発現する記憶B細胞の選択メカニズムと生体防御における役割の解明が今後の課題である。
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Int. Immunol.
巻: 26 ページ: 195-208
10.1093/intimm/dxt057