研究概要 |
高等生物における細胞増殖の根幹は、親細胞からの遺伝情報を正確に倍化し娘細胞に等しく分配することであり、周期ごとに繰り返される一連のプロセスは厳密に制御されている。申請者は、酵母から高等生物の生存と増殖に必須な酵素であるセリン・スレオニンキナーゼCK2が、翻訳開始因子eIF5を特定の細胞周期(G1初期)に直接リン酸化することをすでに報告した(Homma, MK. et al, PNAS, 2005)が、CK2の広範な分布や活性調節の仕組み等から、増殖への具体的な作用点にヒストン合成制御が予想された。本研究は、CK2が、G1/S期に誘導されるヒストンタンパク合成とその終結に関与する機序を明らかにすることを目的とする。さらに、ヒストン遺伝子発現の誘導と終結・タンパク合成制御とともに、機能的なヌクレオソーム形成と刺激に応じた解除の機序についても併せて解析する。 現在までに、各種コアヒストンならびにリンカーヒストン合成という観点では、mRNA発現レベルの定量解析システムを立ち上げ、細胞周期進行の時系列、各種阻害剤添加、遺伝子改変体の導入、それぞれの条件下について、データを集積中である。また、CK2による核機能制御という観点から、特定の細胞周期にCK2と相互作用する核内タンパクの同定を試みた。その結果、二次元電気泳動法と抗体アレイ法、さらに高感度nano LC-Mass解析技術を併用することにより、転写因子、細胞骨格系タンパクの他、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼII、DNA複製開始複合体、ヒストン合成、交換反応に関与するクロマチン制御タンパク等、これまで未同定であったCK2結合タンパクを多数同定した。これらの解析を進めると共にデータを考察し、ヒストンタンパク合成の誘導と終結、コアヒストン2量体・4量体の形成、について統合的な理解を得られるよう推進する。
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