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2012 年度 実施状況報告書

一分子観察による植物のプロトンポンプV-ATPaseの細胞内pH恒常性維持機構

研究課題

研究課題/領域番号 23570171
研究機関岩手医科大学

研究代表者

岡本 晴子  岩手医科大学, 薬学部, 講師 (40552899)

研究分担者 二井 將光  岩手医科大学, 薬学部, 教授 (50012646)
中西 真弓  岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (20270506)
キーワード国際情報交換
研究概要

細胞質内pHの制御は生物のホメオスタシスにとって鍵となる。液胞型(Vacuolar-type) V型プロトンポンプATPaseは、酵母から動植物の細胞内オルガネラ膜上に普遍的に局在する複合体蛋白質で、ATPエネルギーを用いて回転し、細胞質内の水素イオン(プロトン)をオルガネラ膜内に汲み入れて細胞内pHを一定に保つ。しかしながら、V型プロトンポンプATPaseがいつどのように駆動するかについては、全く解っていない。
本研究では、複合体の構成分子(サブユニット)がその作動性に関わる機構を分子レベルで明らかにする。具体的には、酵母液胞膜上に植物のV型プロトンポンプATPaseサブユニットを再構築し、そのATPase酵素活性を解析する。また、暗視野レーザー顕微鏡による一分子観察でその回転触媒における作動性を解析する。
平成24年度は、大きさの異なるプローブの粘性抵抗に対する回転速度をそれぞれに観察し、これらの結果からトルク(回転軸の力)を算出した。また、このプロトンポンプATPaseの平均総回転数は、基質濃度依存的に増加することも確かめた。基質の減少に伴う回転数の減少の際、確率的な回転のゆらぎが生じることも確かめた。これらを発表するべく、現在、学術論文にまとめている。(岡本&中西准教授の共同研究)
さらに、遺伝学的にかけ合わせにより、酵母のV型プロトンポンプATPaseサブユニットを欠損し、相同組み換えによってHIS-TAGをcサブユニットに持つ株を作成して、遺伝子導入によりそれぞれのサブユニットの機能を観察できる系を作成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度は、V型プロトンポンプATPaseの回転の一分子観察の系を用いて、回転触媒機構の解析を行った。粘性抵抗の小さなプローブを用いて、真核生物のV型プロトンポンプATPaseの回転ステップ、速度のゆらぎを解明した。これらのことから、真核生物である酵母のV型プロトンポンプATPaseの回転触媒機構は、今まで報告された好熱菌のものとは全く異なることがわかった。現在、国際科学学術誌に投稿するべく、結果をまとめている。さらに、酵母のV型プロトンポンプATPaseにおいて、EサブユニットのN-末から44番目のグルタミン酸が、その触媒活性に特に重要な役割を担うことを発見し、平成24年度6月の国際学会(FASEB: Transport ATPase meeting.)および12月の生体エネルギー研究会にて発表し、また国際科学学術誌に投稿した(Submitted to and reviewed by PNAS)。さらに、回転触媒機構について、および、V-ATPaseの温度依存的な制御機構についても研究を進め、これらの結果について日本薬学会第133大会において発表し、研究論文をまとめている。

今後の研究の推進方策

25年度
1)V型ATPaseの回転機構とエネルギー共役機構の解明
遺伝子操作によって酵母に、他種のV型ATPaseサブユニットを導入し、その回転機構を解析する。また、EサブユニットのE44に変異を入れたV型ATPaseを用いて、この変異が回転触媒活性にどのように寄与しているのかを詳細に解析する。植物のV型ATPasについても回転機構を解析する。(岡本&中西准教授の共同研究)
2)V型ATPaseのプロトン輸送活性制御因子の探索
引き続き、V型ATPase複合体と結合し、この活性を制御する因子を探索する。(岡本)

次年度の研究費の使用計画

今年度もまた研究補助員を半年間雇用して、回転触媒機構の解明のため解析を行う。また、残りの50%程度を薬品(V-ATPaseの回転観察、酵母、植物の培養、分子生物学用試薬、生化学用試薬)および、各種 プラスチック器具の購入に充てる。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [学会発表] V-ATPaseの回転触媒機構2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤佑香、柿添藍、中西(松井)真弓、岡本晴子、二井將光
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] V-ATPaseの温度依存的制御機構におけるEサブユニットの機能2013

    • 著者名/発表者名
      後藤奈津美、柿添藍、中西(松井)真弓、岡本晴子、二井將光
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] 発芽酵母、V-ATPase, VoV1複合体の解離・会合におけるEサブユニットの機能2012

    • 著者名/発表者名
      岡本晴子、二井將光
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会第38回討論会
    • 発表場所
      岡山大学薬学部、岡山
    • 年月日
      20121222-20121224
  • [学会発表] The E subunit alpha helical domain including Glu-44 has a key role in yeast2012

    • 著者名/発表者名
      Haruko Okamoto, Masamitsu Futai V-ATPase assembly and catalysis
    • 学会等名
      New Frontiers in Transport ATPases: From Mechanistic to Therapeutic Concepts, FASEB
    • 発表場所
      Snowmass Village, Colorado, USA
    • 年月日
      20120603-20120608
  • [図書] G.C.K. Roberts (ed.), Encyclopedia of Biophysics (Vacuolar-Type ATPases in Animal and Plant Cells)2013

    • 著者名/発表者名
      Editor: Gordon C. K. Roberts (Haruko Okamoto, Masamitsu Futai)
    • 総ページ数
      73
    • 出版者
      Springer Berlin Heidelberg

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公開日: 2014-07-24  

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