研究課題
ヒトをはじめとする高等動物の細胞は,細胞膜上に増殖因子や細胞外基質に対する多様な受容体を発現しており,それらの厳密な制御は細胞の生理的応答のみならず,がん等の病理現象とも深く関わっている。Rab11-FIPは,低分子量Gタンパク質Rab11の結合タンパク質として細胞膜への受容体の輸送に関与することが示唆されている。しかしながら,その機能および分子機構には未解明の点が多く残されている。本研究では,Rab11-FIPのうち細胞膜の酸性脂質であるホスファチジン酸と結合するFIPに焦点をあて,乳がん細胞において遺伝子増幅が知られるホスファチジン酸代謝酵素を介した受容体輸送制御の機構を分子レベルで明らかにすることを目指す。本年度は,昨年度に引き続き,ホスファチジン酸結合性のFIPであるFIP5と相互作用する分子の一つで,これまでその機能が十分明らかになっていなかったgamma-SNAPの機能を明らかにすることを中心に解析を行った。昨年までに,gamma-SNAPが,膜融合を触媒する膜タンパク質SNAREの複数の分子種に直接結合すること,さらに,それらSNARE複合体に対してアイソフォームであるalpha-SNAPと同等の複合体解離能を有することを明らかにした。今年度は,さらに,gamma-SNAPが上皮成長因子受容体EGFRやトランスフェエリン受容体TfRのエンドサイトーシスにおいて,特に,初期エンドソームからの輸送に関与することを見出した。Rab11-FIP5は初期エンドソーム以降で受容体のリサイクリングに関わっていることが知られており,この点に置いてgamma-SNAPと共役して機能している可能性が考えられる。
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Mol Biol Cell.
巻: 24 ページ: 2907-2917
10.1091/mbc.E13-01-0014