研究概要 |
私たちはマウス肝臓にGalNAc(4,6-SO4)残基を高度に含む高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸(CS/DS-E)を側鎖に持つデコリン、ビグリカンが豊富に存在すること、GalNAc4S-6ST KOマウスではGalNAc(4,6-SO4)残基が消失しすべてGalNAc(4SO4)残基に変化することを見いだした。肝臓デコリンは肝繊維化で著明に増加することが知られており、CS/DS-Eが肝繊維化に重要な関連を持つと考えられる。 肝繊維化に及ぼすCS/DS-Eの役割を解明するため、野生マウス及びGalNAc4S-6ST KOマウスに四塩化炭素/ミネラルオイル混合溶液(四塩化炭素として2ml/kg)を週2回、9回腹腔注射し、肝臓に繊維化を引き起こした。四塩化炭素投与後9週間飼育を継続し回復過程を観察した。四塩化炭素投与終了後2日では野生型とGalNAc4S-6ST KOマウスの両方でコラーゲン量の増加、COL1a1, TIMP-1, TIMP-2, MMP2, MMP9,MMP13のmRNA発現増加、血清中のアルカリホスファターゼ(AP), ALTの増加、組織へのコラーゲンの沈着とDecorinの増加を観察したが、野生型とGalNAc4S-6ST KOマウスの間で顕著な違いは観察されなかった。回復過程ではコラーゲン量、Sirius redによるコラーゲン繊維の沈着、AP活性、ECM成分 (decorin, COL1、COL3)染色、αSMA mRNAなどからGalNAc4S-6ST KOマウスの方が回復に遅れが観察され、CS/DS-Eが繊維化の回復過程に関与していることが推定される。今後繊維化の回復過程に働く因子の遺伝子発現、活性を肝臓から単離した星細胞を用いて野生とKOマウスで比較し、回復過程におけるCS/DS-Eの役割を解明する。
|