研究課題/領域番号 |
23570182
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研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
笠原 浩二 (財)東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 副室長 (60250213)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ラフト |
研究概要 |
止血血栓の形成には血小板膜上における血液凝固因子の活性化が必要である。従来、血小板は活性化により表面に出てくるリン脂質が血液凝固因子に活性化の場を提供するとされてきた。近年、スフィンゴ糖脂質ミクロドメインである膜ラフトが、血小板機能との関係で注目されはじめた。申請者は血小板膜ラフトに移行する血液凝固因子の存在の可能性を検討し、洗浄血小板をトロンビンで刺激し膜ラフト画分に移行するタンパク質をショ糖密度勾配遠心法により解析したところ、フィブリンが膜ラフトに移行することを見出した。接着血小板における膜ラフトの分布を解析したところ、スフィンゴミエリンラフトのマーカーであるライゼニンは中心領域に局在するのに対し、コレステロールラフトは全体に均一に存在した。このことから、血小板には構成成分の異なる2種類のラフトが存在することが明らかになった。また、接着血小板をライゼニンとフィブリン抗体で二重染色したところ、中心領域において共染色されることが共焦点レーザー顕微鏡により観察された。さらに超高解像度を持つPALM解析システムにおいても共局在が確認された。これはフィブリンが血小板ラフトのなかでもスフィンゴミエリンラフトに移行したことを示している。この結果は、血小板ラフトが不均一であることを世界で初めて示した研究であり、さらにスフィンゴミエリンラフトがフィブリンを介する血小板機能に関わっている可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きな実験上のトラブルがなく、ほぼ予想通りの実験結果を順調に出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
血餅退縮は、血液凝固によって形成されたゲル状のフィブリン血栓が取り込まれた血小板の形態変化によって収縮する反応で、強固な血栓の形成に必要な現象と考えられている。今年度、血小板をトロンビンで刺激するとフィブリンが血小板のスフィンゴミエリンラフトに移行することを見出した。次年度は、それが血餅退縮に関与しているかどうかを解析する。血餅退縮は、細胞外のフィブリン線維が細胞内のアクトミオシンに連結、収縮することによって起きる。よってミオシンがスフィンゴミエリンラフトにおいてフィブリンと共局在するかどうかを解析する。またメチルβシクロデキストリン処理で、血餅退縮が完全に抑制されることを予備的に見出しているが、その際におこるラフトの変化を解析する。さらにフィブリン線維が実際にラフトに結合しているかどうかを免疫電顕法により確かめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
洗浄血小板およびラフト画分調製に必要な試薬、消耗品の購入:トロンビン、プロスタグランジン、メチルβシクロデキストリンなど免疫蛍光法に必要な試薬、消耗品の購入:ミオシン抗体、蛍光標識二次抗体など免疫電顕法に必要な試薬、消耗品の購入:フィブリン抗体、金コロイド標識2次抗体など学会発表に必要な費用:参加登録費、旅費
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