研究課題
酵母の GPI アンカー型タンパク質の中には細胞膜から細胞壁に移行するものが存在するが、特定の GPI-AP が細胞膜に留まるか細胞壁に移行するかについては、タンパク質の種類によってほぼ決まっている。出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae において、細胞膜に主に局在する Gas1p および細胞壁に主に局在する Cwp2p の GPI アンカーの脂質の構造を質量分析により調べたところ、前者はセラミド型である一方、後者はジアシルグリセロール型であることを、これまでに明らかにしてきた。GPI の脂質をジアシルグリセロール型からセラミド型へ変換する過程には Cwh43p が関与しているが、GPI の脂質リモデリングにおいて、セラミドへの変換の生理的役割は不明のままである。Gas1p および Cwp2p の細胞壁/細胞膜の存在比を調べたところ、cwh43 破壊株においては両者の細胞壁における存在比が増加していることを見いだした。このことは、Cwh43p による GPI 脂質のセラミド型への変換は、GPI-AP の細胞膜から細胞壁への移行を抑制することを示唆する。GPI-AP の細胞壁への移行に GPI のホスホエタノールアミンの有無が関係するかを調べるため、ホスホエタノールアミンの除去に関与すると考えられる TED1 遺伝子の破壊株において、Gas1p および Cwp2p の細胞壁/細胞膜の存在比を調べたところ、Cwp2p の細胞壁の存在比が減少していることを見いだした。この存在比の減少は、ted1 cwh43 二重破壊株において緩和された。このことは、TED1 の欠損が GPI の脂質リモデリングに影響を与えることを示唆する。
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