研究課題
本研究では、天然変性蛋白質が標的蛋白質を認識する反応の分子機構の解明を主な目的とする。本年度は次の成果を得た。1.天然変性蛋白質c-Mybと転写コアクチベータCBPのKIXドメインとの結合反応をNMR R2緩和分散法によって詳細に調べた結果、中間体を形成しない二状態的なメカニズムで分子認識することが明らかになった。また、アミノ酸残基レベルでの解析結果から、結合反応の遷移状態において、核となる相互作用や構造が形成されていることが示唆された。このことから、c-Mybは、構造選択機構によって標的分子を認識することが示唆された。この他に、KIX上のc-Myb結合部位に結合する他の天然変性蛋白質pKIDや、天然変性蛋白質Tatについては、誘導適合機構で分子認識することが示唆されている。これらの結果を考え合わせると、天然変性蛋白質による分子認識機構は、天然変性蛋白質に応じて異なると言える。したがって、天然変性蛋白質による分子認識反応には、普遍的な認識機構は存在しないことがわかった。今後は、天然変性蛋白質による分子認識機構を決定する因子の解明が重要課題である。現在、論文執筆中である。2.天然変性蛋白質MLLとCBPのKIXドメインとの分子認識反応をNMR R2緩和分散法で測定した結果、特徴的な緩和分散曲線が観測され、マイクロ秒~ミリ秒の時間域で分子認識することがわかった。現在、その分子認識機構を解析中である。3.天然変性蛋白質の中には、pH依存的に分子認識反応を行うものがある。このような天然変性蛋白質を、別の蛋白質と融合させることにより、別の蛋白質の機能をpH制御するシステムを開発した。4.これらの他に、蛋白質の変性状態ダイナミクスを観測するための一分子計測法開発の共同研究や、NMRによる蛋白質のダイナミクス測定の共同研究も行った。
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