研究課題
チューブリンの翻訳後修飾の一種であるポリグルタミル酸化は、神経、鞭毛・繊毛、中心子に多く見られる。鞭毛・繊毛におけるこの修飾の役割は確立していないが、周辺微小管の形成やダイニンの機能に重要であることが示されている。本研究ではわれわれ自身が単離した緑藻クラミドモナスの突然変異株tpg1株を用いて、その修飾のメカニズムと鞭毛運動機能における役割を解明することを目的とした。この変異株はグルタミル酸化酵素の一つTTLL9を欠損しており、長鎖のグルタミン酸化修飾ができない。まず、多数のダイニン分子種欠損変異株とtpg1の2重変異株を作成し、その運動性から、グルタミン酸化が主にどのダイニン分子種を調節しているかを探った。その結果、長鎖グルタミン酸化は、7種存在するダイニン内腕のうち ダイニンeと呼ばれる単一の分子種と、ダイニンの活性を調節しているダイニン調節複合体だけに大きな影響を与えるという思いがけない結果を得た。さらに、その後の研究において、TTLL9と同様に長鎖グルタミン酸化ができない別種の変異株tpg2を単離し、それがFAP234というタンパク質を欠失していること、および、FAP234がTTLL9の輸送と安定化に関与していることを明らかにした。また相補性検定実験により、鞭毛におけるチューブリンポリグルタミン酸化反応は、完成した鞭毛微小管上で起こることを示した。さらに、tpg1とtpg2変異の両者とも、鞭毛長の短いダイニン欠損変異株中に存在すると、鞭毛長を伸長する機能があることも判明した。これにより、過去に報告されていた鞭毛伸長変異の実体が明らかになった。以上のように、本研究は鞭毛繊毛におけるチューブリンポリグルタミル酸化の新しい機能を明らかにすることができた。
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