研究課題/領域番号 |
23570190
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
有坂 文雄 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (80133768)
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研究分担者 |
金丸 周司 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (50376951)
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キーワード | バクテリオファージ / 分子集合 / 蛋白質間相互作用 / ものさし蛋白質 / 溶菌阻止 / テイルリゾチーム / T4リゾチーム / 溶菌 |
研究概要 |
昨年はgp61.3(sp)とgp5のリゾチームドメインの複合体の結晶化と構造決定について報告した。もう一つ、溶菌阻止に関与すると考えられているのがgp rIである。この蛋白質はgp tに結合するという報告がある。そこで、溶菌阻止の機構を解明するために、gp tとgp rIの相互作用を調べた。可溶化したgp tCTD(C末端ドメイン)はアルギニンを除いても塩がなければ可溶性画分に存在するが、100 mM NaCl存在下では再び凝集・沈殿した。しかし、gp tCTDとgp rICTDを混合すると2:2の複合体を形成し、塩存在下でも凝集が抑制されていることが分かった。gp tCTDの凝集は、感染時に起こるgp tの会合による内膜上の穴の形成と関連づけることができると考えられる。精製したgp tCTDには一部N末端が11残基切断された62残基目から始まる分解物が存在したため、gp t62-CTDを発現する系を構築し、(gp t62-CTD)-(gp rICTD)複合体を精製した。この複合体につき、結晶化条件を検討し、最適化した条件下において結晶化を行い、放射光施設にて回折データを収集し、約2.5Aの分解能でフルセットデータを得ることができた。今後、位相決定を目指す。複合体形成の結果は、溶菌阻止時にgp rIがgp tに結合し、複合体を形成することでgp tの会合を抑制し、溶菌を防いでいることを示唆する。 他方、尾繊維gp34N末端欠失変異体をトリプシン消化して得られたgp34C781-1289につき、結晶化に成功し、2.44Å分解能で構造決定ができた。得られた構造は長さ約285Å、幅約50Å(シャフト部分約20Å)の棒状の構造を形成していた。得られた構造は、T4ファージの小尾繊維gp12とシャフト部分の構造基本単位であるβへリックスや球状ドメインの一部に構造類似性が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標の一つであった、物差し蛋白質gp29は精製が予想以上に困難で、進んでいないが、gpt-gprI複合体の構造と尾繊維gp34のC末端ドメインの構造決定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
gp34Cドメインの構造の精密化ならびにgpt-gprI複合体の位相決定を目指す。また、ハブ蛋白質gp26およびgp28の単離精製を行い、化学量論の決定と共に、結晶化をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究進展状況に鑑み一部を次年度に残したが、未使用額も含めて次年度の計画のために使用する。具体的にはハブ蛋白質、尾繊維蛋白質発現・精製・結晶化・相互作用解析のための培地、ベクター、精製用カラム、エッペンドルフチューブなどのプラスティック製品の購入に充てる。
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