研究課題/領域番号 |
23570191
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
廣明 洋子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80378588)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 膜蛋白質 / アクアポリン-4 / 電子線結晶構造解析 |
研究概要 |
本研究の目的は膜蛋白質の構造情報を高度に活用しつつ遺伝子改変マウスと生化学的手法を用いて、脳のアストロサイトに優位に発現している水チャネルアクアポリン-4(AQP4)の生理機能を構造学的視点から理解することである。脳の視床下部付近のグリア層状構造について、AQP4の細胞外の310へリックスをウシAQP1のものに置換した遺伝子改変マウスと野生型マウスの脳切片を比較観察した。AQP4の分子機能としては、電子線結晶構造解析よりorthogonal arrayを形成し細胞を接着して層状構造も形成できることが明らかとなっている。この遺伝子改変マウスはorthogonal arrayを形成できるが、細胞を接着する機能が欠損していると考えられる。電子顕微鏡観察からこの考えを支持する結果が得られた。すなわち、グリア層状構造部分において遺伝子改変マウスは野生型マウスより脂質2重膜の間隔が顕著に広くなっていることが確認された。尚、単純なノックアウトマウスではこのような表現型は顕著ではなかったので、構造解析で発見したAQP4の機能を個体で確認できた意味は大きいと思われる。野生型マウスとAQP4遺伝子改変マウスの脳からAQP4を有意に発現しているアストロサイトを初代培養した。アストロサイトの初代培養は、細胞のダブリングタイムが遅く必要細胞数を得るのに時間がかかるが、脳そのものから試料を調製するよりも比較的夾雑物を少なくできると考えて実施した。アストロサイトのマーカーであるGFAPとAQP4の共染色を実施したところ、全体の7割程度がGFAPポジティブで、且つそのうちの8割程度がAQP4ポジティブであった。これらの結果はAQP4発現細胞が予想よりも少ないことを示している。それゆえ細胞から膜画分を調製して質量分析を実施するために、より高頻度でAQP4発現アストロサイトを調製する方法の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳の形態観察、質量分析、発現系の確立の3点が平成23年度の達成目標であった。このうち、発現系の確立は着手できなかったが、脳の形態観察は達成でき予想以上の成果が得られた。質量分析のための試料調製法の目途がついており、質量分析法は確立されているので、近いうちに分子の同定ができる見通しがある。
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今後の研究の推進方策 |
良い結果が得られた脳の形態観察については、電子顕微鏡観察用超薄切片を作製し、電子線トモグラフィ法による解析に向けてデータを収集する。複合体の構造解析については、質量分析による分子の同定から発現精製系を確立し、結晶化を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養に必要な培地や結晶化キット等の消耗品、および研究成果についての打ち合わせのための旅費を計上しようと計画している。
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