研究課題
本研究の目的は構造情報を高度に活用しつつ遺伝子改変マウスと生化学的手法を用いて、脳に優位に発現している水チャネルAQP4の生理機能を構造学的視点から理解することである。そのために、AQP4の構造に基づいて細胞外の310へリックスをAQP1型にして無くした遺伝子改変マウスを作製した。遺伝子改変マウスにおける発現遺伝子変化を解析するために、アストロサイトを調製する方法の検討を行ってきた。様々な培養条件を検討した結果、9割以上のアストロサイトがGFAP、コネキシン-43およびAQP4ポジティブとなる初代培養法を確立した。この培養方法を用いて、野生型マウスとAQP4遺伝子改変マウスのP0個体の脳からAQP4を有意に発現しているアストロサイトを初代培養した。野生型マウスや遺伝子改変マウス、ノックアウトマウス、シントロフィンノックアウトマウスの4群について、各群N=3~4となるように試料調製した。質量分析はまだ最終結果が得られていないが、マイクロアレイ解析の結果は得られた。この結果、ノックアウトマウスでは2倍以上の変動が見られた遺伝子数は7と少ないが、遺伝子改変マウスでは200ほどの遺伝子が変動していた。この変化が見られた遺伝子は、接着分子関係の増加を示すとともに、各種キナーゼの減少が多く観察されるという興味深い結果であった。2次元結晶化では、AQP4のC末65残基を欠失させた変異体を用いた試みを行ったが、現状では比較的結晶性の悪い2次元結晶しか得られていない。また、遺伝子改変マウスと、野生型マウスの視床下部付近のグリア層状構造を解析した。両者の3次元立体構造を電子線トモグラフィ法で解析するために、電子顕微鏡観察用超薄切片を作製し解析を進めたが、明確な差を検出できなかった。それは、抗体ラベルのために緩和な固定条件が必要で、細胞膜のコントラストが弱くなるためと考えられる。
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J. Mol. Biol.
巻: 425(22) ページ: 4074-4088
10.1016/j.jmb.2013.06.036
http://www.cespi.nagoya-u.ac.jp/