研究課題
生合成される蛋白質のほとんどは、そのアミノ酸配列に特有の立体構造(天然構造)を自発的に形成し機能を獲得する。一方、ゲノム上には予想以上に、それ単独では、特異的な立体構造を形成しない「天然変性蛋白質」が多く存在することが明らかになってきた。天然変性蛋白質の多くは、多様な異なるリガンドと結合し、特異的な構造を形成することで機能を獲得する。しかしながら、この反応の熱力学的・速度論的メカニズムについては、明らかではない。本研究では、腸管出血性大腸菌O157:H7(以下O157)の天然変性型病原因子であるEspBをモデルとして用いて、EspBによる多様なリガンド結合の詳細な物理化学的メカニズムを、明らかにすることを具体的な目的とした。円二色性、X線小角散乱、蛍光偏光解消及び、フラグメント断片化を組み合わせた解析の結果、EspBは41番目から70番目のアミノ酸領域が、球状蛋白質のフォールディング中間体である、プレモルテングロビュール状態に似たαへリックス構造を形成し、C末端領域は高度にほどけた構造を取ることが分かった。さらに上記のへリックス領域がEspBのリガンドであるαカテニンやビンキュリンと直接相互作用することが示唆された。以上より、EspBは、プレモルテングロビュール型の天然変性蛋白質であり、既に形成されている伸びたへリックス構造を介して、「構造選択」的な方法でαカテニンやビンキュリンと結合することが示唆された。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e71618.
doi: 10.1371/journal.pone.0071618
http://www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2013_09_10_02.html