研究課題/領域番号 |
23570199
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
古池 晶 大阪医科大学, 医学部, 助教 (60392875)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分子モーター / ATP加水分解 / 1分子計測 / 生物物理 |
研究概要 |
ATP駆動の回転分子モーター、F1-ATPase(F1)は、ようやくその回転子角度とATP触媒部位の化学状態との関係が解明されたが、ATP加水分解の化学エネルギーがどのように回転運動へと変換されるのか、という肝心の仕組みは依然未知のままである。「どのような回転子なら回転運動が可能か」に答えることが、回転の動作原理に迫る最短コースだと考え、全く新しい手法として、金粒子やDNAなどのミクロ構造物に、回転子の微小領域(ペプチドなど)を修飾した人工回転子の作成を試み、その回転の可否や向き・振る舞いを調べる。 本年度は、まず従来の領域を削る方法を用いて、回転に関与している領域を限定(候補領域の選定・限定)することを行った。当初は、回転子領域(回転軸部分に相当)を遺伝子操作で削除した「軸なしF1」が回転可能であることを踏まえ、その僅かな接触領域のどこかに「回転に必要不可欠な微小領域」があるという狙いに基づいていた。しかし、実験結果は、その予想に反し、γには回転に必要不可欠な領域がないという驚くべき方向に進んでいる。(1)遺伝子操作で、γの回転軸部分をC末のαへリックス1本にスライスしてしまっても、野生型F1の~20%の回転速度(~40回転/秒)、~50%の回転トルク(~20 pNnm)を示した。(2)「軸なしF1」とは対照的に、回転軸だけを持つ変異体も、100回転/秒以上の回転速度で回転した。この変異体と「軸なしF1」の回転子に共通なアミノ酸残基は、僅か~10残基程度である。それらのアミノ酸残基も、固定子と接触しているとは考えにくい領域にあり、γには、回転に必須の領域がないことが示唆された。γのどの微小領域も回転可能な能力を持つのか、あるいは、固定子自体が棒状のミクロ構造物であればよいのか、人工回転子を作成することではっきりさせたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の研究計画どおり、従来の領域を削る方法を用いて、回転に関与している領域の限定(候補領域の選定・限定:23-24年度の計画)を行ない、研究実績で示したような知見を得た。研究計画では、試行錯誤を必要とするものとして、観察系の改良を行う予定であった。予算の交付決定が9月末まで未定だったため、備品(高感度高速カメラ)の購入が遅れ、若干の支障を生じたが、研究内容の遅れにまでは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の年次計画通り、24年度は引き続きA)従来の領域を削る方法を用いて、回転に関与している領域を限定(候補領域の選定・限定)するとともに、B)領域を足す方法を用いて、候補領域を修飾したミクロ構造物を人工回転子の作成を試みる。また、本年度では進展の乏しかった観察系の改良も引き続き進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画よりも備品及び消耗品の購入費が抑えられたので、約170千円が次年度使用額として生じた。本年度に進展の乏しかった光学系の改良に充てる。次年度分の研究費は、当初の計画どおり、旅費と消耗品として使用する。
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