研究課題/領域番号 |
23570200
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小田 俊郎 独立行政法人理化学研究所, x線構造解析研究チーム, チームリーダー (20321739)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アクチン / X線小角散乱 / 重合 |
研究概要 |
アクチンの自発な核形成過程を検討するために、Gアクチン溶液のX線小角散乱をSPring-8BL45XUにて測定した。測定した濃度範囲は1-4mg/mLと希薄にも関わらず、原点付近で散乱強度の顕著な低下が観察され、排除体積効果と解釈される。これはGバッファーが低イオン強度なためと思われる。また、この結果はGアクチン間に斥力が働いており、この斥力によって単量体状態が保持されていることを示している。さらに、アクチン単独の核形成過程を検討するために、塩添加による自発的重合過程を時分割測定で追跡した。MgCl2を終濃度1mMに成るように混合した直後、原点付近の散乱強度の低下が見られなくなることが分かった。これは、塩添加による重合過程では、塩によってGアクチン間の斥力がなくなり重合が開始されることをしている。また、重合時の散乱プロファイルは不動点をもつことがわかった。これは、重合過程で同一の繰り返し周期をもつ構造体のみが形成されることを示している。最終生成物であるFアクチンはらせん構造をしているので、中間体もらせん構造をしていると考えられる。そこで、らせん構造をした中間体(2-13量体)、Gアクチン、Fアクチンの散乱プロファイルを仮定して、時分割測定で得られた散乱プロファイルをデコンボリュートした。その結果は、塩混合初期に2量体が形成されるが、3-5量体は存在しないことを示した。この結果は3-5量体の形成がエネルギー的に不利な過程であると解釈される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩を添加してアクチンを自発的に重合させ、X線小角散乱時分割測定により、その重合過程を中間体がどのような割合で推移するのかを明らかにした。この知見はアクチン結合蛋白質Spireがどの様にアクチンの重合核形成を促進するかを知る上で重要な第一歩であり、また、SPring-8にある理研ビームラインBL45XUでストップドフロー装置を用いて時分割測定する方法も確立し、Spireを始めとするアクチン結合蛋白質の研究にも活用できるため。
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今後の研究の推進方策 |
アクチンの自発的重合過程が大枠ながら分かってきた。喫緊の課題は以下の2つ。1)2量体はアクチンの重合過程にかかわっているか?単なる行き止まりか?条件を変えて実験を繰り返し、2量体についての知見を深める。2)この過程を重合核形成促進因子であるSpireがどのように影響し、核形成を加速しているか?そのために、Spireの発現精製等生化学的な実験を本格化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の目標は、X線小角散乱の時分割測定を利用して、アクチン重合のメカニズムを解明することであった。第一段階として、時分割小角散乱データのみを用いて解析を行った。解析がスムーズに進まない時、アクチンをピレン・ヨードアセトアミドで蛍光標識して蛍光強度の時間変化を同時測定をし、それにより重合過程を多面的に解釈する必要があると考えて、蛍光同時測定装置を作製するための予算を計上していた。しかし、アクチン単独の重合過程は比較的単純に散乱データのみで、ある程度解釈を付けることができたので、測定条件の検討や散乱データの蓄積に力をいれ、装置の試作を次年度に持ち越した。次年度は、アクチンの重合過程における2量体の役割を詳細に検討する課題、さらに、アクチン結合蛋白質Spireが重合に及ぼす影響を小角測定により解明する課題に入る。異なった蛋白質の混合系となるので、小角散乱データだけで解釈することが難しくなると思われ、同時測定装置を製作する必要があると思われる。繰り越した費用はその製作と、Spireが発現精製の段階に入ったので、それに必要な薬品等消耗品に使用する・
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