研究課題/領域番号 |
23570200
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小田 俊郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (20321739)
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キーワード | アクチン重合 / 核形成 / 逐次重合モデル |
研究概要 |
前年までにSPring-8の理研ビームラインBL45XUにおいて取得された、アクチン重合過程の時分割小角散乱データを再解析した。また、スパイヤー存在下で記録されたアクチン重合過程の時分割データも解析し始めた。これまで行ったアクチン単独系の重合解析では、重合中間体の存在比率を見積もる解析を中心として、逐次重合モデルを用いた解析を補助的に行ってきた。本年は、モデル解析を中心に据え、考えうるいくつかの逐次重合モデルを仮定して、解析をさらに進めた。その結果、行き止まりの2量体が共存する逐次重合モデルが、もっとも確からしいという結論が得られた。このモデルにおいて、 1)2量体は重合前駆体で重合初期に蓄積されること 2)3量体形成過程が重合の律速過程となること 3)4量体形成で自由エネルギー低下が見られるが、Fアクチンの場合と比べて小さく、フィラメントの伸長過程よりむしろ核形成過程と見られること 4)5量体は安定な重合の種となること が分かった。 また、スパイアーは2量体形成時に 重合に適した2量体を選択することを通して、形成の促進に繋がるという知見を得た。 「アクチン単独系の重合過程」の投稿原稿が完成した。4月中に投稿予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年、短報としてアクチン重合の論文を第一弾として投稿したが、物理系雑誌(Physical review Lett)であったため、分野外として却下された。投稿中に解析も進んだため、短報でなくレギラー論文として最投稿をすることにして、原稿の書き直しを行った。一部、解析方針の変更などがあり、再投稿に手間取り現在に至っている。その意味でやや遅れている。原稿は共同研究者のチェックの段階にあり、近日中にNature Chemical Biologyに投稿される予定である。 スパイヤー存在下で得られたアクチン重合時分割小角散乱データの解析を進めている。まだ、全体像はつかめておらず、解析を急ぐ必要がある。解析ソフトはフリーウエアーのScilab上ですでに整備してある。 理研での連携研究者(研究室の研究員)が就職し、人手不足となって生化学実験等が延滞したことや、理研から県立大に移り実験環境が変化したことも、計画の実行が遅れた原因である。
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今後の研究の推進方策 |
スパイヤー存在下で得られたアクチン重合時分割小角散乱データの解析を中心に進める。現在のところ、2量体形成が鍵ということが明瞭となったが 全体像はつかめていない。 解析を急ぐ必要がある。その結果から、新たな作業モデルを作成し、その検証のために生化学実験や時分割小角散乱をくり返す必要があり、出来るだけ早い段階でこのステージに進みたい。さらに、スパイアーの作用を検証するために、スパイアーの変異実験も重要であり、早い段階で実施する。これらの結果ももとに、現在知られているスパアーのアクチン重合促進モデルと比較検討していく。解析ソフトはフリーウエアーのScilab上ですでに整備してあり、スパイアーの発現系も順調なので、解析が軌道にのれば比較的順調にすすむと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
理化学研究所より兵庫県立大学に研究場所が変わり、なかなか本格的な実験を行うことができなかった。また、理研で一緒に仕事をしていた研究員が就職したため、人手不足となり、実験量が落ちた。 コンピュータシュミレーション用のコンピュータ購入、生化学実験の費用、学会参加費、論文の発表費等に支出する予定である。本年度に残金が出た場合には、すみやかに、基金に返金する予定である。
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