スパイヤーやコルドン・ブルーなどアクチン重合核形成因子の機能機序を、アクチンだけの系の重合核形成過程と比較検討し、その特徴を明確にするため、アクチンの核形成過程を時分割X線小角散乱法により検討した。 Gアクチンは、その調製に用いる溶液が低イオン強度であるため、アクチン分子が互いに反発し重合を阻害している状態であること、そこに中性塩を添加すると反発力が遮断されて重合が始まること、二量体から三量体に進む過程に大きなエネルギー障壁があること、5量体からFアクチンの重合過程が始まることが分かった。この結果は、アクチン重合核形成因子が、1)三量体を形成しやすいアクチン二量体を選ぶこと、また、2)アクチン分子を勧誘や配送することによって実効的なアクチン単体濃度を上昇させていること、を暗示する。Arp2/3複合体やフォルミンでは、この戦略で核形成のエネルギー障壁を乗り越えているように見えるが、WH2を複数もつ重合核形成因子に関して、まだ情報が不足している。特に、アクチン分子の勧誘や配送機構の検討は今後の課題である。 本年は、この成果を発表することに主眼をおいた。まず、Nature Chemical Biologyに投稿したが、審査にまわされなかったため、Scientific reportsに投稿した。レフリーから、塩添加による重合開始プロセスの解釈や曲線フィットの妥当性などに関する指摘がなされた。それらに関して、再計算することになり時間を要し、本年度中に論文は受理されなかった。できるだけ早く受理されるよう修正を進めている。
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