研究課題/領域番号 |
23570204
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
石見 幸男 茨城大学, 理学部, 教授 (80159772)
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キーワード | MCMタンパク質 / DNA複製フォーク / DNAヘリカーゼ |
研究概要 |
(1)フォークでの分子集合 MCMの活性化:昆虫細胞での発現と免疫沈降実験およびグリセロール密度勾配遠心法により、CDC45はMCM3と高い親和性を示し、加えてMCM4,5,7との結合性も示すことが分かった。一方で、CDC45, MCM2-7およびGINSの共発現とタグを利用した精製では、それらをすべて含むCMG複合体はごくわずかにしか形成されなかった。よって、この方法でCMGを容易に調製できるほどは、3者の親和性は高くないと結論される。RPAとの結合:外来性RPA2発現細胞をFlag抗体で免疫沈降したところ、外来性RPA2とともにRPA1の共沈降が確認された。DNA複製フォークに存在する可能性のあるDNA複製因子として、MCM4, PCNAおよびTIMタンパク質の共沈降を調べたが、それらの共沈降は認められなかった。この実験では、クロマチンをマイクロコッカルヌクレアーゼで分解した遠心上清を免疫沈降の材料として用いたが、DNA分解の過程でフォークに集合したタンパク質が解離した可能性が考えられる。そこで、DNAの分解の前にDNAとタンパク質を固定する処理を行い同様の実験を行っているが、現在のところRPA2の沈降に伴う他複製因子の共沈降は検出できていない。 (2)MCM結合タンパク質のMCM結合領域の同定:DNA複製フォーク進行の制御に関わると考えられるMCM-BPタンパク質がMCM2-7すべてと結合性を示すことを明らかにした。さらに、MCM-BPは、MCM2, MCM6およびMCM7のアミノ末端領域(AAA+ドメインを含まずZnフィンガードメインを含む)と特異的に結合することがわかった。MCMのアミノ末端側は、MCM2-7タンパク質間の相互作用に機能すると考えられるので、MCM-BPの作用は、MCM2-7の複合体形成に甚大な影響をもつと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)フォークでの分子集合:CDC45とMCM2-7の相互作用の特異性が明らかになった。CDC45が主にMCM3と結合性をもち、さらにMCM5, MCM4, MCM7との結合性を有することから、MCM2-7ヘリカーゼの制御サブユニットと考えられるMCM3/5に主に働きかけることで、MCM2-7のヘリカーゼ活性発揮に寄与すると考えられる。この結果は、CMG複合体において、MCM2-7のDNAヘリカーゼ活性がどのように発揮されるかという問題に対して新たな視点を与える。CMG複合体の精製には、各タンパク質複合体間の結合性が高くないことから、複数のタグを利用した精製方法を採用する必要があることが分かった。 (2)MCM結合タンパク質のMCM結合領域の同定:これまでに数多くのMCM結合タンパク質を我々は同定している。それらが、MCM2-7に作用してどのような効果をもたらすのかについて、MCM2-7の結合特異性とともに、MCM内の結合領域を調べることで明らかにしようとしている。今回は、MCM-BPの作用が明らかになった。MCM-BPはDNA複製フォークでMCM2-7の機能を制御する働きをもつと考えられるが、その作用は不明であった。MCM-BPは主にMCM2,6,7のアミノ末端領域に結合することからMCM2-7の複合体形成に甚大な影響を与えると考えられる。つまり、フォークのMCMに働きかけ、その複合体構造を破壊する可能性が考えられる。実際に、フォーク様DNAとMCM2-7複合体との結合を見る試験管内実験系で、MCM-BPはフォーク上のMCM2-7複合体を解離させた。さらに、試験管内および細胞レベルの実験から、MCM-BPはMCM7とMCM5に働きかけることで、MCM2-7の解離を促すことも分かった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)と(2)については、これまでの成果を基に、タグ抗体を複数使用してCMG複合体の調製を行う。幾つかのMCM結合タンパク質(具体的にはMCM10やClaspinなど)については、MCM2-7に対する結合の特異性を、昆虫細胞中ですべてを発現させ、付加されたタグを用いて結合タンパク質を調製した時に、MCM2-7の各タンパク質が、どのように結合タンパク質に付随して回収されるかという方法で調べる。CDC45のMCM結合特異性を調べた時と同様である。さらに、これらMCM結合タンパク質がMCMのどの領域に結合するのかをMCM6とMCM7について調べる。これらの実験から、各MCM結合タンパク質がMCM2-7複合体に対し、どう働きかけるかを解明する。 (3)については、これまでにMCM2-7, helicaseBおよびRECQL4の3ヘリカーゼについて、解離できるDNA長を比較し、helicaseBのみが長いDNAをはがすことを明らかにした。次にATP/Mgの要求性については、MCM2-7が5mMを要求し、RECQL4は10mMを要求することが分かっている。helicaseBについてもATP要求性を調べ、そのことからDNA複製での役割について考察する予定である。MCM2-7については、ヘリカーゼ活性とともにフォーク様DNAの結合性を調べる系を構築している。MCM2-7の各タンパク質の内、どのサブユニットがDNA結合性を発揮するかを、変異タンパク質を含むMCM2-7複合体のDNA結合性を調べることにより明らかにする。さらに、MCM2-7のDNA結合性に影響をもつと考えられるCDKの作用についても同じ系を使って調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度同様に、生化学的研究試薬および細胞培養に用いる試薬と培養皿などの消耗品に、研究費の大部分を使用する予定である。加えて、備えている機器類に修理の必要が生じた場合には、修理代にも使用したいと考えている
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