(1)フォークでの分子集合 フォークにおいてMCM2-7ヘリカーゼとDNA合成酵素alphaの協調に機能することが提唱されているMCM10の性質について調べた。特異抗体を用いた細胞レベルの実験では、細胞周期のS期からG2期にかけて、MCM10はクロマチン結合画分に定常的なレベルで回収されることが明らかになった。このMCM10の局在は、PCNAなどのフォーク因子の存在様式とは異なるものであり、MCM10がフォークのみに限局して局在する証拠は得られなかった。一方で、発現して精製したMCM10タンパク質の性質を調べる実験から、MCM10は、それ自身が多量体を形成すること、および、一本鎖DNA結合性を有することが分かった。多量体を形成することから、フォークで機能するMCM10タンパク質がDNA分解酵素処理により可溶性画分に抽出されにくい可能性が考えられる。 (2)MCM結合タンパク質の9種についてMCM6内の結合部位を明らかにした。MCM-BPがMCM6のアミノ末端領域にも親和性があるのとは対照的に、他のすべてのタンパク質は、MCM6内のATP結合部位を含むカルボキシ末端領域に親和性を示した。Timタンパク質は、MCM6のまさにATP結合部位に結合性を示した。よって、Timなどは、MCM2-7のATP結合性に影響をもつことで、MCM複合体のATP分解活性およびDNAヘリカーゼ活性に直接的に作用する可能性が示唆された。 (3)MCM、RecQL4そしてhelicaseBの3つのDNA複製に働くヘリカーゼの性質の比較を行った。DNA依存的なATP分解活性については、MCM4/6/7とRecQL4が低い活性を示すのに対し、helicaseBは圧倒的な強い活性を示した。このことは、helicaseBがモデルDNA複製系において唯一DNA複製を促進する機能があることと符合する。今回の結果は、helicaseBのDNA複製での役割を支持する。
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