研究課題
本研究では,tmRNA以外に翻訳の滞りをレスキューする新規の蛋白質YaeJに関するリボソームレスキュー機構の解明を目的としている。本年度では,予定に反して昨年度に引き続きYaeJにおけるリボソームとの機能部位の同定を実施した。これはリボソームとの結合をYaeJの生物種間での保存性が高くかつ立体構造で表面に露出しているアミノ酸残基を機能部位の候補として選択し,その残基をAlaなどに置換した変異体のペプチジルtRNA加水分解活性(以下PTH活性)の測定およびリボソーム結合能を検出する実験である。本来はこれらの実験は昨年度で終了しているはずであるが,(1)YaeJがリボソーム分画と混ぜると分解されてしまうこと(YaeJのC末端領域にある塩基性アミノ酸が豊富な領域をプロテアーゼOmpTが切断すると推測される)(2)それに従って,リボソームの結合実験の再現性が悪いという問題点が明らかとなった。そこでこれまで使用していたMG1655株の使用を止め,新たにOmpTが欠損されているBL21株においてyaeJ遺伝子を欠損させた株を作製し,それを用いて実験をやり直した。結果,PTH活性が低下するのに,リボソームと結合する場合としない場合の二通りあることが明らかになった。これらの実験からリボソームに正しく結合するのに必要な残基が示唆された。また,分担者の姫野らのdirected hydroxyl radical probing実験から,リボソームの30SサブユニットにあるmRNA tunnelの位置にYaeJのC末端領域が結合しているだけでなく,50Sサブユニットへの結合の可能性が示唆され実験をさらに展開している。
3: やや遅れている
「YaeJにおけるリボソームとの機能部位の同定」に関しては,本来はこれらの実験は昨年度で終了しているはずであるが,(1)YaeJがリボソーム分画と混ぜると分解されてしまうこと(YaeJのC末端領域にある塩基性アミノ酸が豊富な領域をプロテアーゼOmpTが切断すると推測される)(2)それに従って,リボソームの結合実験の再現性が悪いという問題点が明らかとなった。そこでこれまで使用していたMG1655株の使用を止め,新たにOmpTが欠損されているBL21株においてyaeJ遺伝子を欠損させた株を作製し,それを用いて実験をやり直している。従って,(3)と判断した。
次年度は,変更した株を用いて,「YaeJにおけるリボソームとの機能部位の同定」の実験を,結果をまとめて論文投稿までを確実に行う。また,「大腸菌無細胞蛋白質合成系を用いたtmRNAとYaeJのリボソームレスキューの競合実験」および「プロテオーム解析によるYaeJ特異的に発現抑制される遺伝子の探索」を実施する。
前年度未使用額が生じたのは,株の変更のため,PTH活性の測定など費用の掛かる実験が一時停止したためである。本年度は,すでに株の変更には成功しており,引き続きこれらの実験を行うため特に問題なく使用される。次年度でも,消耗品(DNA合成費,薬品類・酵素・試薬,プラスチック製品など)を中心に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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