研究課題
本研究では,翻訳の滞りをレスキューする新規のタンパク質YaeJに関する翻訳停滞解消機構の解明を目的としている。本年度では,これまでのYaeJにおけるリボソームとの機能部位の同定の実験を続け,すべての結果をまとめるとともに論文発表まで行うことができた(Kogure et al. Nucleic Acids Research, 2014)。その内容は,リボソームとの結合をYaeJの生物種間での保存性が高くかつ立体構造で表面に露出しているアミノ酸残基を機能部位の候補として選択し,その残基をAlaなどに置換した変異体のペプチジルtRNA加水分解活性(以下PTH活性)の測定を,無細胞タンパク質合成系を使って検出した。その結果,リンカー領域 Arg105およびC末端領域 Arg118,Leu119,Lys122,Lys129,Arg132にそれぞれ変異を与えると,PTH活性が著しく低下することが明らかとなった。さらに,ショ糖密度勾配法によって,これらの変異体はリボソームへの結合能が低下していることが示された。以上のことから,C末端領域に存在する限られた数のアミノ酸残基がリボソームと直接結合して,翻訳が滞ったリボソームのA-siteに入るモデルが示唆された。分担者の姫野らのdirected hydroxyl radical probing実験から,リボソームの30SサブユニットにあるmRNA exit tunnelの位置にYaeJのC末端領域が結合していることが明らかにされつつあり,変異体の実験の結果と総合することによってリボソーム上でのYaeJの詳細な分子メカニズムが明らかになることが期待される。
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Nucleic Acids Research
巻: 42 ページ: 3152-3163
10.1093/nar/gkt1280
生化学
巻: 86 ページ: 86-91
http://molbio.chem-bio.st.gunma-u.ac.jp/