研究課題
真核生物や古細菌のtRNA遺伝子の中にはイントロンを含むものが存在する。まずtRNA転写物のイントロン部分がスプライシングエンドヌクレアーゼ(SEN)で切り出された後、近年、見いだされたtRNAリガーゼ(RtcB)によってエキソンが連結されると考えられている。我々は古細菌M. acetivoransの細胞抽出液中に微弱なリガーゼ活性を見いだしたが、残念ながらその活性を濃縮することはできなかった。また、他のグループによって見いだされたRtcBのオルソログを大腸菌を用いて発現させることも試みたものの、M. acetivoransのRtcBは、いかなる方法を用いても不溶化し、また、可溶化させたRtcBを用いてもリガーゼ活性を見いだすことはできなかった。一方、大腸菌に存在するRtcBは過剰発現させることが可能で、M.acetivoransのSENで切り出されたtRNAのエキソン同士を連結させることが可能であった。tRNA遺伝子にイントロンが存在しない大腸菌になぜRtcBが存在するのか、その意義を探るために、RtcBによってイントロンが環状化されるらしいという報告に注目し、RtcBの真の機能はtRNAの連結というよりも環状RNAを生み出すために必要なのではないかという作業仮説を構築した。そこで、M. acetivoransの細胞からRNAを抽出して環状RNAを探索したところ、確かにtRNAのイントロンに由来する環状RNAが安定に存在していることを明らかにした。低分子環状RNAにはオリゴDNAがハイブリダイゼーションしないため、その検出は非常に困難である。したがって他の生物において低分子環状RNAが存在するのかは明らかとなっていない。今後、低分子環状RNAが、他の生物にも存在するのか、また何か機能を担っているのか、に注目して研究を続けたいと考えている。
すべて 2013
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J. Biochem.
巻: 153 ページ: 317-326
10.1093/jb/mvs153
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