本年度は、昨年度から取り組んでいるポリグルタミン酸化修飾の異常亢進による網膜視細胞変性に関する研究を進め、CDBミーティングで発表した(紺野ら)。発表時の討論を元に、近年報告された繊毛関連分子の輸送機構(IFT)に必須なダイニンの阻害剤を利用した視細胞蛋白質Xの局在制御検証実験系を立ち上げた。現在、これらの結果を含めて論文投稿の準備中である。くわえて、線虫をモデルとしたポリグルタミン酸化制御異常による一次繊毛の機能異常に関する研究を推進し、環境ストレスに対する応答に繊毛軸糸チューブリンのポリグルタミン酸化が重要であることを報告した(木村ら、CDBミーティング)。現在、学術雑誌への掲載を目指して論文を執筆中である。さらに、昨年度後半より取り組んでいるポリグルタミン酸化修飾拮抗因子であるポリグリシン化を消失させたTTLL10ノックアウトマウスにおける繊毛機能の解析を継続し、細胞外の粘性増加に対する繊毛機能の応答にポリグリシン化が重要な役割を担っていることを見出し、Gordonリサーチカンファレンス、FASEBカンファレンス、繊毛研究会、日本解剖学会中部支部学術集会、日本解剖学会総会・全国学術集会などで発表した。これらの学会で得られた情報や提案などを参考に、現在学術雑誌への掲載を目指して論文を執筆中である。これらチューブリンポリグルタミン酸化(および拮抗因子ポリグリシン化)と繊毛機能に関する組織および種横断的な解析にくわえ、繊毛における脱ポリグルタミン酸化酵素のひとつであるCCP5の酵素学的な特性を明らかにしJBC誌に発表した。一連の研究成果は、分子(酵素、翻訳後修飾)から細胞および個体機能まで多階層にまたがって「チューブリンポリグルタミン酸化修飾による一次繊毛構造・機能調節機構とその破綻」に切り込む知見を与えた点で生命科学上の意義が大きい。
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