研究課題
大腸菌K12株とO157株のOmpCはアミノ酸配列上94%の相同性を有するが、T4ファージの吸着に対するリセプター活性は全く異なる。アミノ酸配列の相違が認められる細胞外ループについて、活性あるK12株型を不活性なO157株OmpCに導入したところ、ループ1、4、5の導入により100%の活性が得られた。したがって、これらのループ内で異なっているアミノ酸残基がT4ファージの吸着に重要であることが明らかとなった。さらに、これらT4の吸着に重要なアミノ酸のひとつを置換することにより不活性となったOmpCを作成し、このOmpCを発現する大腸菌に感染可能なT4の尾部線維先端部変異体を単離することができた。このことから、OmpCとT4尾部線維先端部の相互作用に関与するアミノ酸残基が同定できるようになった。T4はOmpCとLPSの両方に依存した吸着機構とOmpC非依存かつ特殊なLPS構造を認識する吸着機構を有する。それぞれの吸着機構に重要な尾部線維先端部位を同定するために、一方の機構は保持したまま他方の機構がそこなわれたT4変異体の単離を試みたところ、いずれの場合も複数種単離することができたので、変異部位の解析からそれぞれの機構に特有なアミノ酸を特定することができる。塩基配列解析を終えたものについては変異が尾部線維先端部位のアミノ酸置換であることが判明している。興味深いことに、OmpC依存機構を失った変異体は得られた3種とも特殊なLPSに依存した吸着にはcofactorを要求することがわかった。さらに、このcofactorは共通ではなく、変異体毎に有効成分が異なっていた。野生型ファージはこれらのcofactorを要求しないことから尾部線維先端部位のアミノ酸置換と関連した興味深い現象である。
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Genes Genet. Syst.
巻: 89 ページ: 51-60
http://dx.doi.org/10.1266/ggs.89.51