研究課題/領域番号 |
23570213
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
湯川 眞希 名古屋市立大学, システム自然科学研究科, 研究員 (00448705)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 葉緑体 / 翻訳開始 / 重複遺伝子 / in vitro系 |
研究概要 |
mRNA上の一つのタンパク質コード領域(以下シストロンと呼ぶ)の翻訳は、一つの翻訳開始機構によって進むと考えられて来た。 代表者は、 植物葉緑体のndhC/ndhK mRNAにおける重複遺伝子の下流側シストロンの翻訳において、今まで原核・真核生物ともに報告例が無い『1シストロン2翻訳開始機構』仮説を立てた。 通常のtranslational coupling機構である上流シストロンの5'UTRからの翻訳を介する「機構I」とは別の、5'UTRを介さず上流シストロンの内部を必要とする「機構II」の分子機構を、(1)リボソームは何処に入るか、(2)リボソームは内部配列を翻訳しながら進むのか、(3)固有のトランス因子が必要か、の3点を代表者が確立したの葉緑体in vitro翻訳系および大腸菌再構成in vitro翻訳系を用いて明らかにするのが本研究の目的である。H23年度は研究実施計画に従い、(1) リボソーム(又は30Sサブユニット)は何処に入るか(何処を識別するか)(2) リボソームは内部配列を翻訳しながら進むかに焦点を絞り解析を進めた。その結果、ndhCシストロン中央部の~40ntとndhK 開始コドン直前の~40ntが必須領域であること、ndhCシストロン内に3個ある同じフレームのAUGのうち、上流から2番目のAUG-2がリボソームの入り口であることが明らかとなった。また、蛍光標識アミノアシルtRNAを用いた解析により、AUG-2から始まる翻訳産物を確認できたことから、リボソームは内部配列を翻訳しながら進み、下流シストロンの翻訳の再開始に利用されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、 『1シストロン2翻訳開始機構』仮説のうち「機構II」の分子機構について、(1) リボソーム(又は30Sサブユニット)は何処に入るか、何処を識別するか、(2) リボソームは内部配列を翻訳しながら進むかの2点に焦点を絞り解析を進める研究計画であった。これまでの実験で、上流シストロンであるndhCの5‘UTRと開始コドンAUGを取除いたmRNAを用い欠失あるいは置換変異を導入することにより、ndhCシストロン中央部の~40ntがリボソームエントリーサイト候補として同定され、ndhCシストロン内に3個ある同じフレームのAUGのうち 上流から2番目のAUG-2がリボソームの入り口であることが明らかとなった。 また、ndhK 開始コドン直前の~40ntが翻訳の再開始に必須な領域であることも明らかとなった。さらに、葉緑体in vitro翻訳系に蛍光標識アミノアシルtRNAを加え反応産物をトリストリシンSDS-PAGEで分析したことろ、AUG-2から始まる約6kDの翻訳産物の検出に成功した。これらの成果を得たことは、本年度の目標を十分に達成できており、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は従来の計画通り、(2)リボソームは内部配列を翻訳しながら進むのか の解析をを引き続き行う。昨年成功した葉緑体in vitro翻訳系に蛍光標識アミノアシルtRNAを加え反応産物をトリストリシンSDS-PAGEで分析する方法で、AUG-2からの翻訳とndhKの翻訳の相関を調べる。相関性が確認できれば、「機構II」の分子機構の証拠となる。加えて、ndhK 開始コドン直前の~40ntの必須領域について体系的な欠失・変異実験で必須領域を絞り込む。この領域の二次構造を調べ、変化させてndhK翻訳能を比較し、二次構造が必要かどの配列が重要かを明らかにする。新たに(3) 固有のトランス因子が必要か の解析を開始する。まず、 大腸菌粗抽出液(S30画分)を用いて葉緑体ndhC/ndhK mRNAが翻訳されるか調べる。必要に応じndhC5'UTRを大腸菌由来のものに置換する。ndhKの翻訳が再現できれば、市販の大腸菌再構成in vitro翻訳系を用いる。再構成系は翻訳に必要な基本因子のみを含むので、もしndhKが翻訳されればトランス因子は不要と言える。ndhKの翻訳が見られない場合は、リボソームを精製タバコ葉緑体リボソームと置換する。さらに、葉緑体S100分画を直接または硫安分画などして加える。これでndhKが翻訳されればトランス因子が必要と考えられる。平成25年度も引き続きこれらの解析を行い『1シストロン2翻訳開始機構』仮説のうち「機構II」の分子機構の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費50万円 :変異導入に使用する合成オリゴ、種々の分子生物学用試薬・キット、蛍光標識アミノアシルtRNA、市販の大腸菌in vitro翻訳系などを購入。旅費10万円:分子生物学会(福岡)2名参加。5万円×2名。人件費謝金30万円:タバコの栽培、葉緑体ライセートの調製などの実験補助1名×50日分。その他40万円:質量分析等の解析外注(20万円)、英文校閲(10万円)、論文投稿料(10万円)。以上、合計130万円の使用を計画している。
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