研究概要 |
本年度は主にHmo1の主要な標的の一つである(Pol Iによって転写される)35S rRNA遺伝子におけるHmo1の役割についての研究を行った。HMO1遺伝子の破壊(Δhmo1)が35S rRNA遺伝子の転写に与える影響は予想に反してそれほど大きくないことから、Hmo1はその重要性ゆえにそれを補う仕組みが存在し、HMO1単独破壊ではその機能の欠損が重篤な表現型として現れないのではないかと仮定し、過去にその変異がΔhmo1と合成致死性を示すことが報告されていたFPR1遺伝子に着目し、両遺伝子の二重破壊株(Δhmo1Δfpr1)を作成したところ、過去の知見に反しこの株は致死ではなかったものの、野生株、及び各単独破壊株に比べ著しい生育遅延を示し、Hmo1とFpr1が細胞にとって重要な役割を共有することが再確認された。ノザン解析の結果、二重破壊株ではPol II, Pol IIIによって転写される他のリボソーム構成因子の遺伝子に比べ、35S rRNAの量が大きく低下することが明らかとなった。Pol Iによる転写異常の原因を探るため、Pol I系の基本転写因子、及びPol I自身の35S rRNA遺伝子への結合をChIP解析により調べた結果、二重破壊株ではこれらの因子の35S rRNA遺伝子プロモーターへの結合が著しく低下していた。一方、Pol Iの結合は遺伝子の下流においても、それ以上の低下は観察されなかった。これらの結果は、Hmo1/Fpr1がPol I による35S rRNA遺伝子の転写を、(転写の伸長よりも)開始段階で促進するという、従来に無い知見を与えるものである。加えて、Δfpr1株においてはHmo1の標的遺伝子(35S rRNA遺伝子、リボソームタンパク質遺伝子)への結合が有意に低下することも見出され、本研究のテーマの一つであるHmo1の標的遺伝子への結合の仕組みの解明についても、重要な手がかりを得る結果となった。
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