研究課題/領域番号 |
23570216
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
井上 幸江 安田女子大学, 薬学部, 教授 (60159978)
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研究分担者 |
赤木 玲子 安田女子大学, 薬学部, 教授 (50150967)
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼ / ストレス応答 / 熱ショック因子 / 転写制御 / 酸化ストレス |
研究概要 |
熱ショック転写因子(HSF)は、温熱ストレスによって活性化され、熱ショックタンパク質(Hsp)を誘導合成することにより生体機能の恒常性を維持する。一方、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)は、ストレス応答タンパク質として見出され(別名Hsp32)、有害なフリー・ヘムを分解することによって酸化的組織障害に貢献している。様々なストレスに応答して誘導されるHO-1の転写制御にHSFがどのように関与しているかを明らかにすることによって、複雑な発現調節機構を有するHO-1の生体防御機構における生理機能を明らかにすることを目的としてマウス胎仔繊維芽細胞(MEF)を用い実験を行った。 その結果、1)温熱ストレスによるHO-1の発現誘導は、検出できなかった。2)ヘムによるHO-1の誘導は、野生型に比べHSF1欠損MEFの方が高かった。3)ヘミン添加と温熱ストレスの併用によるHO-1の発現誘導変化を解析したところ、野生型MEFでは、ヘミン単独によるHO-1の誘導とほぼ同じ程度であったが、HSF1欠損細胞では、温熱ストレスにより、ヘミンによる誘導が著しく抑制された。4)カドミウム添加によるHO-1の誘導も、同様の結果を得た。5)DNAチップ解析の結果をもとにリアルタイムPCRを行ったところ、両MEFにおいて、温熱ストレスによって小Maf転写因子群の発現が亢進していた。 以上の結果から、HO-1の発現制御にHSF1が関与していることは明らかとなったが、その詳細な分子機構は、まだ解明途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの結果から、HSF1によるHO-1遺伝子の発現制御は、当初予想していた熱ショック配列を介しての単純な正に制御とは異なり、他の転写因子との相互作用による複雑な制御を行っていることが示唆された。その候補として小Maf転写因子が関与していることがわかってきたが、まだその詳細は、未解決である。
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今後の研究の推進方策 |
免疫共沈校により、HSF1や小Mafに結合するタンパク質の同定を行い、それらが、HO-1遺伝子の発現制御にどのように関与しているかを解析する。また、それらの因子がHSF1によるHO-1発現誘導にどのような影響を及ばすかについて、siRNAによる抑制実験やアデノウイルスベクターを利用した高発現系を構築して、検討する。 また、HO-1の発現制御に、HSF1によるクロマチン構造の修飾が関与しているかどうかを明らかにするために、細胞をヒストンアセチル化酵素阻害剤のトリコスタチンあるいは、DNAメチル化抑制剤の5-aza-2’-deoxycytidinで処理した後にストレスを負荷し、HO-1の発現変化をウエスタンブロットやリアルタイムPCRで解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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