研究課題
mRNAの翻訳や安定性の制御機構の解明には、mRNAと複合体となっているRNA結合蛋白質(mRNP構成因子)の役割を明らかにすることが必要である。本研究では、アフリカツメガエル卵母細胞のmRNP構成因子としてこれまでに同定したRAP55とP100蛋白質の解析を進める。 高等動物のRAP55にはこれまで解析してきたRAP55Aの他に、解析の進んでいないRAP55Bが存在する。ヒトHeLa細胞にはA,BともにmRNAの発現が見られた。RAP55AとRAP55Bは90%近い相同性を持つLsmドメインをはじめ、そのC末側に伸びる領域のドメイン構造も共通している。そこで、RAP55Bを細胞に発現させたところ、RAP55Aと同様に細胞質に局在してmRNP顆粒であるP-ボディへの蓄積が観察された。また、RAP55A、Bともに高発現によって細胞質に大きな顆粒形成が見られた。この顆粒にはpoly(A)+ mRNAが共局在するのでmRNP顆粒であると考えられ、RAP55Aと結合する蛋白質の共局在も明らかとなった。 P100は出芽酵母Pat1pと相同性を持つ翻訳抑制因子である。P100を高発現するとカエル卵成熟の進行が遅れるという知見に基づき、卵母細胞内でP100が結合しているmRNAの網羅的同定を行っている。また、P100は卵母細胞には存在するが未受精卵には存在せず、卵成熟進行に伴って分解されると考えられる。そこで、P100の点変異体を作成してこれらの卵成熟進行における安定性を検討した。
2: おおむね順調に進展している
RAP55のパラログは培養細胞での局在について調べたが、機能解析は今後の課題である。P100が結合しているmRNAの同定についてはおおむね順調に進んでいる。ポリA鎖長の検討については、予備実験を進めている段階である。P100分解機構はおおむね順調に進んでいる。以上のように、全体としてはおおむね順調と考えている。
今後は、P100とRAP55の機能を明らかにすることをめざし、細胞内及び無細胞系での内在性及びレポーターmRNAに対する効果を検討する。
基金化によりフレキシブルに研究費を利用できるようになったので、今後蛋白質の機能解析を行うために必要となる研究費を確保するために次年度に繰り越した。次年度は、繰越金を含め今年度より多くの試薬やプラスチック器具等の消耗品が必要となる見込みである。このほか、旅費、実験補助の人件費及びその他の費用(論文投稿料など)に使用する計画である。
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