研究課題/領域番号 |
23570219
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
小川 英知 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 バイオICT研究室, 主任研究員 (20370132)
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キーワード | 転写因子 / クロマチン / 翻訳後修飾 / 核内受容体 / 核構造 |
研究概要 |
発生段階の細胞分化過程において、転写因子のクロマチン上にある標的遺伝子への結合制御は細胞の運命決定に重要なステップであり、その過程に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析が、エピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つである。 本研究では初年度に従来の手法では困難であったゲノム上の転写制御領域のクロマチン構造を可視化するシステム構築を目的に、ステロイドレセプター(GR)の標的配列(MMTV-LTR)を直列に複数コピーゲノム上に有したMMTVアレイ細胞株をヒトがん細胞で樹立した。これによってホルモンの添加によって活性のON/OFFが可能なGRのクロマチンへの結合を可視化でき、その結合に伴った転写活性化時のクロマチン構造変換を蛍光顕微鏡および超高解像度顕微鏡によって経時観察することが可能となった。この細胞を用いてGRともに、SUMO化修飾依存的にGRに結合する介在因子ARIP4の局在変化を経時的に観察を行った。観察の結果、GRは予想通りホルモン依存的に細胞質から核へ移行し、速やかにMMTVアレイ上に局在する様子が見られた。一方ARIP4はホルモン非添加で核内にドット状の局在を示し、核内の特定の構造体に局在しているが、ホルモン添加によってその構造体から速やかに解離した後、MMTVアレイ上に局在するのが観察された。この事は核内構造体が介在因子の標的遺伝子へのリクルートに対して重要な前段階である可能性を示している。またARIP4がATP依存的なクロマチン構造変換因子であることから、ホルモン依存的な核内での局在変化は核内構造とクロマチン構造変換のクロストークを示唆するものだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の律速段階である生細胞の経時観察の条件設定は順調に進み、現在ホルモン添加後2時間以上の生細胞における核内複合体形成の蛍光観察が可能となった。具体的にはホルモン依存的な核内局在変化の蛍光観察の妨げにならない培養液および血清の選択、比較的短時間ながら培養液の蒸発を防ぐための対策などの検討を行い通常の培養条件に近い状態で顕微鏡下での観察を可能とした。この実験系が安定に再現性良く行えることによって、本年度予定としている時間軸に沿った生化学的な解析が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで解析を行ってきたMMTV上での転写複合体の解析を一般化するために、核内受容体とその介在因子のクロマチン上への結合のゲノムワイドの解析を進める。これらの因子の結合を明らかにするChIP-seq、クロマチンの構造変換を調べるFAIRE-seq.およびその細胞での遺伝子の発現の変化を検出するRNA-seqを組み合わせることで、本研究で着目するクロマチン構造変換と、それを担う複合体の形成機構、それによって行われる遺伝子発現制御をゲノムワイドに明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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